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▼ 2.トントン拍子で

「―――で?話って何だよ」

さんさんと光るお日様の下
俺は何故だか、屋上で山田と二人ぼっち。
それもこれも、あんのバカ二人のせいだ。

あの時勢いで山田に声をかけたはいいものの、
どうするとなって とりあえず
屋上にいかねーかなんて誘って。
断れるかと思ったけど、あいつは
予想外にそれを了承して 今に至る。

俺が黙ってるのを見かねてか、
先に山田の口が動いた。

「俺と佐々…だったっけ、
そんな喋ったことねーよな?」
「あー、うん ねぇ
つか俺の名前知ってたのか」
聞くとまぁな、と返事がくる。
へぇ。俺はてっきり認知されてねーと
思ってた。ちょっと意外。

「佐々の名前は
女子からよく聞く。チャラいって」
「っは、マジかよ」
チャラい?褒めてんのか?貶してんのか?
わっかんねー、そう思って頭をかくと「つか、」と
山田が話を続ける。

「んなことより 俺に用事あったんじゃ
ねーのかよ」
「あー…無い」
「は?」
「だから、無い」
「はぁあ!?」

ンだそれ、とタレ目がジト目になって
俺を見つめる。山田の反応は、まぁ
ごもっともだろうな。
普段全然話さねーただのクラスメイトが
自分を連れ出したかと思えば用事はねぇってんだから。

「なんつーか、勢い?ノリ?みたいな」
「いや全然わかんねーけど」
「まぁ山田と話てみたかった、って
事にしといてくんない?」
「…別にいーけど お前、変な奴だな」

変な奴?
またこれは褒められてる?貶されてる?
いや、少なくとも褒められてはないな?
どう反応したもんかと頭を悩ませつつ
足元を見ていると、聞こえてきた言葉に
自分の耳を疑った。

「まぁ。俺もお前と
一回話してみてーとは思ってたから いいけどよ」
「…は?」

今度は俺が驚く番だった。
クラス1の人気者、かつディビジョンの代表。
その山田が俺と??どうして?

「それこそなんでだよ?
山田が俺ととか マジで意味わかんねーんだけど」
「お前 バンドとかやってんだろ?」
言われた言葉にあぁ、と声を上げる。
そういえば昔 一度だけ兄貴に誘われて
バンドをやったことがあったっけ。

「でも何で知ってんだ?バンドやったのって
1回きりだし、めっちゃ昔だぞ」
山田と認識なんてまるでなかった頃だと
思うんだけど。なんで?

「これも女子から聞いた。
゛佐々くんはギターできるんだよ゛ってな」
…山田の周囲にはよく女子がいるのを見るから
噂や話題が豊富なのも、無理ないのか。

「俺もギターとか好きだし、そのへん
興味あっからさぁ。佐々なら喋れんじゃねーかって
思ったんだよ。まぁ、期待外れだったみたいだけどな」

そう言ってあからさまにガッカリした風な
山田に、なんか俺も ちょっと申し訳なくなってくる。
「なんか悪ィ…
けど、俺の兄貴ならずっとバンドやってて
ギターやってっから 山田とは話合うかもしんねぇ」
「マジ?」
「うん。兄貴は兄貴で最近ラップに
興味あるっつってたし、よかったら家に――」

来るか?なんて
ナチュラルに誘いかけていやいや待て
そこまで仲良くねーだろ!?と
自分に待ったをかける。

山田ってディビ代表だし そもそも
こんなただのクラスメイトである俺が
軽率に誘っていい相手なのか?
第一、ダチでもねぇのに。
こんなグイグイ誘ってたら流石に引かれるだろ…!?
あー、うー、と唸りながら顎に手をあてて
視線を逸らしながら考えていると、
しびれを切らしたかのように声が聞こえてきた。

「なぁ 家行っていいのかよ?」
「あ、家?あー、うん、いい、けど」
「なんか歯切れ悪くねぇか
別にダメなら」
「いや、マジで なんつぅか
俺はいーんだけど 山田はいーのかよ」
「?あ?
ダチんち行くのとかフツーだろ」

ダチ…?

目をきょとんとしながらも
「あ、そう」と返して OKOKと返事をする。
どうやら俺は山田のダチ枠、らしい。
まともに喋ったの 今日くらいのモンなんだけどな。

(…山田って 変なやつ?)

悪そうには見えねェけど
距離感よくわかんねぇな。

まぁいいか。



その後遊ぶ日を決めたり
兄貴のバンドのあれこれを話ている間
山田はなんとなく楽しそうな顔をしてた、と思う。

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