▼ 僕の初恋が男だなんて認めない!
施設にいた頃
仲良くしてくれてた
僕より5つ上のお姉さんがいたんだ。
甘栗色のロングヘアで
所々跳ねているのは癖っ毛なのだと
語っていた。その時のお姉さんは
少し恥ずかしそうに笑っていて、
そんな笑顔を見る度に 僕の心は跳ねた。
僕がどんなに突っぱねても
意地を張っても、お姉さんは
頭を撫でてくれて 許してくれた。
今思えば これが
僕の初恋だったんだ―――――
なのに
in自宅 リビング―――
僕は今 目の前で起こっている事が
信じられずに立ち尽くしている。
「い、ち兄……今なんて
おっしゃったか もう一度
聞いてもいいですか?」
震える声で いち兄に説明を求める。
「?ああ、構わねえよ。
こちらは――施設にいた頃、
お世話になってた恭さんだ。
三郎も覚えてるだろ?」
゛恭さん゛
それは 僕の初恋である
お姉さんの名前だ。
でも
「…本当に、恭さん
なんですか?」
だって
今 目の前にいるのは どうみても―――
男、なのだ。
「あはは、久しぶりだね
三郎くん。僕の事忘れちゃったかな」
そう言って穏やかに笑う
恭さんを名乗る男の人は
どこか お姉さんに似ていた
懐かしくもある笑顔だった
が 納得行かない…!!
そんなはずないんだっ
だってお姉さんはいつも
ワンピースを着ていたし
髪だって長かった!!
服から覗く手足もスラッとして
細くて、女の人そのもので…っ!!
にこにことしている恭さん(仮)
をよそに、僕は いち兄に小声で話しかける
「いち兄 お尋ねしたいことがあるのですが…」
「どうした?」
「いえ…何でも、無いことなのですが…
僕の記憶違いでなければ、
恭さんは 女性の方だったと…」
そういうと いち兄は ああ、と小さく
呟いた。
「三郎は知らなかったのか。
恭さんは まぁ 色々あって
女装をしてたんだよ」
じ、
女装…?!
驚き目を見開くことしかできない僕に
いち兄は恭さん(確定)の方を
向いて、「すみません、三郎のやつ
久々の再会に気が動転してるみてーで、」
と伝える。
動転しないほうがおかしくないでしょうか
なんて 言えないけれど 思いながら
改めて恭さんに視線をやる。
長かった髪はショートに切り揃え
られており、僕とも長さは
変わらないくらい。
…身長は 今座ってる分
憶測でしかないけれど 多分
僕よりも大きいだろう。
解せない
解せない解せない解せない!!
僕の初恋が 男だなんて!!
こんなの認められるかっ!!!
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