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▼ アイツとオレA

翌日。
遅刻ギリギリに登校すると
ダチが駆け寄ってくる。

「はよーっす!
なぁ二郎〜!昨日の呼び出し
どうだったんだよ!
怪我してねえってことは
やっぱお前が勝ったのか?!」
バンバンと背中を叩かれ
やめろと言うように手で避ける。

「はよ ったくオメーは朝からうるせーなぁ
勝ったも何も、喧嘩してねーよ」
寧ろコクられちまった
なんつったらこいつはどんな顔すんだろうな。
言わねえけど。

「はぁ?!あの泣く子も黙る
佐々に呼び出されたのにか?!」
「あいつそんなにつえーのかよ、
(そんな雰囲気なかったけど)」
「って言ってるそばから!
あこにいんの佐々じゃね?!」
ビシッと指さされた方向に視線をやると
確かに佐々がいた。
どうやらこいつも遅刻ギリギリの
登校らしい。

ぼうっと見つめていると
佐々の方もこっちに気付いたみてーで
思いっきり目が合う、気まずい。
でも無視するわけにも いかねえ、よな…

「佐々…はよ」
「おは、よう 山田
それじゃ」
足早に去っていくあいつの、背中を見届ける。

なんだかな。友達ならつったけど
結局距離置かれてんじゃねーの?俺。
別にかまやしねーんだけど
何か釈然としねーっつーか。

゛付き合って゛なんて嘘で
俺はおちょくられてたんじゃねえかとか
思っちまうよな。
好かれてる要素全く感じねえし。
や、昨日今日でわかるもんでも ないのか

ウンウン頭を悩ませていると
授業開始のチャイムが鳴り出してしまう
「やべっ二郎急ぐぞ!!!
一限目移動教室なの忘れてた!」
「そうだったかぁ?俺も忘れてたわ」
「悠長に言ってる場合か!走るぞー!」
「へいへい」
ぱたぱたと駆け足で教室を移動していく。
さっきまで頭ん中にあった佐々のことは
すぐに忘れてしまっていた。


―――――――――――――


昼休み。
教室でいつものグループとたむろっていると
「二郎〜!佐々が呼んでんぞ!」
と声をかけられる。
教室の入り口を見れば、なんのデジャヴか
昨日と同じよーに顔を強張らせて
こっちをみてる佐々がいる。

ったく、なんだっつんだよ
少し気だるく思いながらも
「おー、今行くわ」と席を立つ。
今日はなんの用なんだ。

「佐々 なんか用」
そう聞くと奴は少し考える様に
視線を落としてから 頬をかく。
「佐々?」
なんだ?呼び出しといてだんまりかぁ?
思わず眉間にシワがよる。

それに気づいたのか
佐々はごめん、と1言言ったあとに
「放課後時間 あるか」

その顔に少し赤みがさしてみえたのは
目の錯覚かなんなのか。
とりあえず、今日の予定が何もない事を
確認しながら「ああ」と返す

すると佐々は
どこかホッとしたように胸を撫で下ろして
「放課後 付き合ってほしい」
と口を開いた。

゛付き合う゛その言葉にドキッと
しちまったけど、これは、まぁ
ダチとしての第一歩だよな
意識してしまいすぎた自分が
少し恥ずかしくなる。

「わかった。
待ち合わせは校門前とかでいーか?」
「うん。待ってる」

その約束をしたあと
佐々はすぐに帰って行った。

「…二郎 佐々と遊ぶほど
仲良かったのかぁ?!」
「いや」

昨日から始まった
ダチ(仮)だとは 言えない。

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