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▼ 30.トラブル発生

「山田 そーいうジョーダンまじで傷つくって、」
女の子からも野郎からもいい匂いで定評あるこの俺が
くせぇなんて言われる日が来るなんて。
あってはならない事だ。つうか許されない。
ム、とする度に頭痛がするので声を出すのを
止めてへばっていると、困惑した山田の声が続く。

「や ジョーダンとかじゃねえって。
お前マジでアルコールみてえな匂いがする」
「アルコールぅ…?俺まだ未成年なんだけど、…ぁ、」
(待てよ…?)
ふと思い出すのはさっき飲み干したドリンクの事だ。
ついうっかり一気飲みなんてしちまったけど
そーいやアレ なんか変だったんだよなぁ…。
飲んだことねー感じっつーか
しゅわしゅわしてて、ちょっとアルコール臭…
「あ」
「あ?」
「…さっき飲んだジュース、酒だったのかも」
「は?ちょっと待ってろ、」

そう言いながら山田がもそもそ動いてるのを
感じたけど無理、ギブ、正直顔をあげるのも
物事を考えるのもきちぃ。体はあっついし。

「…酒は飲まねーからわかんねぇけど、
お前のコップ嗅ぐとやっぱアルコールくせぇな。
店員さんが間違えちまったのかもな、」
「う…」
なんで俺も気付かずに飲んじまったんだよ
己に絶望を覚えつつ、はぁ、俺 成人したら
女の子と酒飲むんだって楽しみにしてたのに
こんな事でもしかして酒に弱いって
気付くハメになるとは。Wの絶望でしかねぇ。
いや 山田にもノリでちゅーするし組み敷くし
何気トリプルショックか。とんだ最低な1日になっちまった。

どうしたもんか、二人で硬直していると
不意に勢いよくドアが開かれて互いに体がビクついた。
「すすすみませんお客様!!」
慌てふためいた可愛らしい高い声は、泣きそうな色を含んでいる。
「先ほどお運びさせて頂いたドリンクが実はアルコール入りで、」
やっぱりそうらしい。けど俺はあまりの頭痛に喋る事すら億劫で
それを察した山田が代わりに喋ってくれていた。
「あー…すんません、それ もう飲んじまったみてーで」
「!!!す、すみません、すみません…!
すぐに変わりのものをご用意いたしますのでッ、」
「あー。ジュースはもういいんで お水用意して貰っても
大丈夫すか、こいつ酔っちまったみたいなんで」
「!!!かしこまりました、早急にお持ちいたしますッ」

バタン!!!!

来た時も 帰るときも 盛大に大きな音を立てて
走去っていったな、と頭の隅で思いながら
できた相方に感謝する。

「じろちゃん サンキュな」
「気にすんな」
「あと ちゅーしてごめん」
「ん。アレは流石に吃驚したけどよ。
今しんどいんだろ?無理に喋んな」
「おう」

まだまだ言いたいことはいっぱいあるけど
ここは素直に甘えとこう。なんてったって
本当にしんどいんだ。無理して挙句吐きなんて
しちまったらもっと申し訳ねえ。
ゆっくり抱き起されて 山田の優しさに甘えながら、
あいつの肩にもたれて爆速で届いたお冷を流し込む。

(酒に酔った大人が水を飲む理由が
ずっと意味わかんなかったけど
確かに 飲むと少し楽になる気がすんな)

「佐々 平気か」
「ん…ちょっと楽になった」
「そうか。つってもまだキチィんだろ
暫く横になってろよ」
「そうする。はぁ…んっとにごめんな、山田」

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