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▼ 29.どうしてこうなる?

「なぁ山田――――俺 お前のこと好きかも、」
「…………は?どうしたんだお前」

穴があったら入りたい。
ンなことを思うのは
これから約半日後のことだし
今現時点での俺の理性も何もかも
無いに等しいモンだった。
(なんでこうなったんだっけ)
ふわふわした頭で思い出せるのは
個室に入って 頼んでたドリンクが来て…
喉が渇いてたからってガブ飲みした所
迄だった。気が付いたら俺は赤いソファに
山田を押し倒していたし、告白はしてたし。

(何がなんだかわかんねえけど…)

困った様に俺を見上げる顔が
何でかすげー可愛いく見えるんだ。
だから腕の中にいる山田に キスをした。
いつかの劇でやったような
触れるだけのキスじゃない。

「ん……ちゅ……」

ねっとり 音をたてるように
何度も唇を啄んでは舌先で唇をなぞる。
山田がいけねえんだ。
ちゅーするたびにぎゅって目を瞑って
恥ずかしそうに震えるからやめらんない。
だけどすぐにドンドンと胸を叩かれて
唇を離した。
「ンッ……ぷは、
ッテメェ何考えてんだよ!!
んなのダチ同士で…おかしいだろ…!!」
顔を真っ赤にさせてちょっと泣きそうな顔。
怒ってんのか、なんなのか
今の俺にはわかんねえ。

「山田 怒ってる?」
「たりめーだろうが!!
ほんとふざけんなって。
大体ちゅーとか…!!
好きな女の子とするもんだろ…ッ」
ゴシ、と唇を拭う仕草にちょっとだけ
胸がつきんとする。
(俺は…何で山田に好き、なんて
言っちまったんだろうって思ってたけど…
もしかして俺 ほんとに山田のこと―――)

「クソッ…お前が話してーことがあるっていうから
心配してきてやったのに、こんな…!!
マジでねぇだろ、」
「ごめん」
「ごめんって思ってんなら今すぐ退けって」
「ん」
言われるがままに山田の上から退こうとする。
(山田、声は怒ってるみてーなのに
顔は困惑しているだけっぽいんだよな。なんでなんだ?
それに山田だったら俺のこと
投げ飛ばせそうなのに。つーか頭やけに
ふわふわするっつーか
クーラー効いてるはずなのに身体はあちぃし
頭がぼーっとして何も考えらんねえな…)

「…ごめん山田 無理かも」
「は?」
怪訝な顔をする山田をよそに俺はフラッと倒れて
再び山田の上に覆いかぶさってしまった。
密着した身体からあいつのいい匂いがする。
ってそうじゃない。俺本当にダメだ、立ち上がらねーとって
わかってんのに身体に力が入んねえ。
「テメェ ふざけんのも大概に…!!」
「ふざけてねーんだよ、
山田…これ マジなやつ………」
(あー……頭ガンガンしてきた)
突如の頭痛にいよいよ目を開いている
事もだるくなった俺は あいつに被さったまま
目を閉じて口から息を吐く。
「はぁ……ふぅ………」
「………その反応 嘘じゃなさそーだな。
お前 ほんとにどうしちゃったんだよ」
「ん……してー話があるのは、
ほんとなんだけどよ」
真剣な話しようとかそういう
テンションに今はなれねんだよな。クソ。
なんでこんなに頭いてーんだよ分けわかんねえ。
項垂れていると 山田が俺の腕を突いてみせた。

「佐々…お前…」
「ん…」
「なんか…臭くねぇか」





「あ゛?」

唐突なディスりに 一瞬頭痛も吹き飛んだわ

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