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▼ 26.それは突然に

山田が気になる。だから話しかけに行く。
ダチだから会いに行くっつーのもあるけど
単に喋りてえって訳じゃなくて
最近はずっと゛あいつと居たい゛
゛あいつをずっと見てたい゛って
気持ちが拭えなくて。別に変態に目覚めた、とか
んなんじゃねーけど とにかく
俺は山田が気になって気になって、
寝る前にうっかりちゅーした日のこと
思い出しちまうくらいには重症だった。

(ずーっと山田のことばっかり考えちまう)


そんな日常が もしかしたらもう暫く
続くかもしれない。もやっとしたまま
生きていくのかもしれない。そう思ってたのに
変化は突然にやってくるんだ。



「…えっ?今なんて、」
「だーかーらー。お母さん転勤決まったの。
だからお引越しよ。学校も転校、来月には
新しい学校になるから――」
「ってまてまてまて、」
「コラ!お母さんにそんな口の利き方するんじゃ
ありません!」
ベシッという背中へのビンタと共に
「いや、」と声を絞り出す。
「来月つったって来月もう来週じゃん!
急すぎるっしょ…!?」
お母さんに詰め寄ると「そんなこと言われてもねぇ」
と首をひねられる。

なんだよそれ。俺間違ってねえよな?
つかそれ俺の台詞だし。

「俺にだってダチとか居るし思春期だし!!
寂しいとか色々あるだろ!」
「なーに言ってんのよ!あんたコミュ力
だけはあるんだからなんとかしなさい!」

ベシンッ!!

「いった…!!!」
二度目の背中へのビンタに悶絶していると
親はそんな俺に目もくれずスタスタと
家を出て行ってしまった。

(信じられない…)

なんて親だ、なんて思いながら背中を擦ると共に
俺はまた山田の事を考えるのだった。

(もうすぐ転校する、っつったら
山田はなんていうんだろう。って、
何も言うはずないか。
゛そうか゛゛元気でな゛そんな所だろ。
誰に言ったってそうとしか言えないだろ、
あー…。

なんで俺、今寂しいなって思ったんだろ。
嫌だって思ったんだろ。
…もっと山田と居たかったって
思ったんだろうな。
ああ くそ…。めちゃくちゃ重症じゃねーか)

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