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▼ 24.遭遇

山田はモテる。俺だってモテる、とは
思ってるけど山田には劣る。
悔しいけどあいつは優しいし顔も綺麗だし
とにかくいいやつだから 納得のモテ。
告白されてるとこなんて割としょっちゅう
見かけるし、こないだなんて
他所の学校の子が来てたくらいで―――
まぁ、珍しくない光景なんだわ。
現に今も 目の前では山田と女の子が
対峙していて、気まずい雰囲気を醸し出していた。
気まずさの原因は間違いなく俺だろうな。

「あー……わりィ。お邪魔しました、」
くるりと踵を返して退散しようとすると
「おい」と呼び止められて、しゃーなし振り返ってみる。
「さっきよっちゃんが佐々の事探してたぞ」
「あーうん。知ってる。俺、よっちゃんから
逃げてここに来たんだ」
「屋上って見つかったら逃げ場ねーだろ」
山田のツッコミはごもっともだ。
そう。ここは太陽が燦々と見下ろす
学校のテッペン 屋上。どこにも逃げられないけど
俺は屋上好きだからなぁ。

「ウーン…もう帰っちまおうかな」
「いやそれが一番ダメだろ」
「ナイスツッコミ、っていやいや
山田俺と喋ってないで女の子と喋んな?」
俺もう行くから、そう言ってひらひら
手を振って女の子の方にも手を振っておく。
「山田に飽きたら俺のとこおいでね」
「えっ…!?」
露骨に驚いた反応をみてにっこり笑うと
俺は足早にその場を後にした。

きっとあの子は山田に告白をするかした後なんだろう。
山田が誰かを好きとか、誰かと付き合うとか
んな話は聞いたことねーけど
さてさてどうなることやら、だな。




因みに俺はこの後山田に怒られる事になった。
理由は『誰彼構わず誘うのを辞めろ』との事だ。
付き合うことにしたのかと聞くと
そういう訳ではないらしい。
うーん。山田が俺の女癖について指摘して
くるのはすげー珍しい。けどま、あいつが言うなら
ちょっとは気をつけてみよーかなって思わなくもない。

(いつもなら人の話なんざテキトーに
流すんだけどなぁ)

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