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▼ 23.青春?というよりダラダラ

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「やーまだ 一緒にかえろーぜ」

放課後、真っ先に山田をナンパすると
周囲がざわついた。何だよ。
耳を澄ませてみると『喧嘩してたんじゃなかったのか』
なんてひそひそ話しているのが聞こえた。
ほっとけっつーの。つか話し合いしてから
ちょくちょく教室でも喋ってたろーがよ。
みてなかったのか?まぁいいや。

「なー。山田はやく準備しろって」

そう言って自分の席から動かない
山田に催促をすると、怪訝な表情で見上げられる。
「帰るつっても俺とお前の家ンなに
近くねーだろ」
「ノープロブレム。俺にはチャリがある」
「お前にあっても俺にはねーよ」
「あ〜もう察しが悪いなぁジロちゃん。
仲直りついでに乗せてってやるつってんだよ」
「今のどこでそう言ってたんだ…!!?」
「今言った」
「ほんとわけわかんねぇなお前」

そんないつも通りの軽口を叩きながら、
なんだかんだ言いつつ山田は支度をしはじめて
気が付けば何事も無かったかのように
並び立って廊下を歩いていた。

「運転は佐々がやってくれんだよな?」
「おう。何、漕ぎたい?」
「念のための確認だ。お前急に俺に
漕げって言うかもしれないからな」
「山田。お前は俺の事をなんだと思ってるんだよ」
「そーいう奴。ふざけた奴」
「なんか雑な説明!は〜。ま、いっか」

指の先で鍵を弄りながら、
マシンガンの如くトークをする。
喧嘩、つか距離置かれてたとは思えねーくらい
話が弾むわ話題が尽きないわ。
お互い溜まってるモンとかあったのかもな。

チャリ置き場につくと、山田がギョっとした
様子で俺の方をみた。
「お前これ…座るとこねーやつじゃんか」
「おう」
「おうじゃねーって」
「うまいこと脚引っかけてたらいけんだろ。
それとも立って乗るのはこえーのかよ〜?
イケブクロの番犬なんだろ?」
「あ?こわかねぇよ!!ただ思ってたのと違った」
「ふんふん。あ、どうしても気になるなら
運転変わろうか」
「お前ほんとふざけてるだろ…?
つかやっぱり俺の言った通りじゃねーか」

なんか言ってたっけ、と一瞬
マジで思い出せなかったけど そういえば
『急に俺に漕げって言うかもしれない…』
って言われてたな。思い出して思わず吹き出す。

「ははっ 山田って
俺のことすげーわかってんだな!」
「こんだけ一緒にいりゃーな」
はぁ、とつかれた溜息になんだか嬉しくなった。

(うんうん。これぞいつもの日常だわ)

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