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▼ 20.もとの日常?

それからの俺らは相変わらずの
関係だったけど―――――

「お。はよ、山田」
そう言いながら手を振ると
少しだけ離れた所にいた山田が
こっちを向いて 片手を上げた。
近寄っていきながら声をかける。
「こんな時間に会うの珍しくねぇ?
山田が早起きとか明日雪じゃん」
けらけら笑いながら言うと
ムッとした顔で「うるせぇ」と
睨まれた。はは。山田の睨みには
慣れてしまった感が否めない。

次の言葉をかけようとした時、
山田の後でじっとしている影が見えて
気になって山田の後ろをのぞき込んだ。
「お」
「えっ、」
影とばち、と視線が交わる。
山田と同じ、綺麗なオッドアイだった。

「ねぇ君もしかして山田の弟くん?」
「…はい 山田三郎です。
愚兄がお世話になってます」
愚兄って。辛辣う。
「三郎くんね。俺は佐々恭
よろしくね。てかなんで此処に
弟くんが?体験入学とかあったっけ?」
何の気なしに聞くと二人とも首を
横に振ってみせた。

「じゃあなんなんだ?」
「…俺が弁当持ってき忘れたから
届けてくれたんだよ」
「わ、なにそれ めちゃくちゃいい
弟くんじゃん…えらいね」
素直な感想を述べると、三郎くんは
キレイなお辞儀をして「学校があるので」
と さっさと去って行ってしまった。

遠ざかる背中を見ながらぽつりと漏らす。
「なぁ あの子はシャイなのか…?」
口数少なかったしな、なんて思っていると
「シャイではねーよ」と返される。
それに納得はしたものの、
続いて放たれた言葉には面食らった。

「…お前 あいつには手ェ出すなよ」
「……はん?どういう事?」
思わず隣の山田を見ると、
顰めっ面で地面をみてやがった。
(なんだっつーの)

暫く考えてみて、思い当たったのは
こないだ勝手にちゅーしたこと
だったけど……

「…あれはお前だからやったんであって
似てたら誰でもいーって訳じゃねぇって。
…聞いてる?山田」
反応のない相手にむっとして
顔の前で手をブンブンと振って見せると、
山田は何を言うでもなく俺の腕を
避けて校舎へと歩き出した。



(山田の顔 ちょっと赤かったか…?
…って、そんなわけ無いか)

ふう、と息を吐いて「待てって」
なんて言いながら山田を追いかける。
くだらない話をしながら登校する
いつも通りの日常。

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