07



「佑真、お前ね、7点て。一桁とった奴なんか初めてみたわ。漫画みてぇーだな、おい」

キィッと翔ちゃんが椅子の背にもたれながら、眼鏡のフレームをあげた。
4つ年上の幼馴染み、翔ちゃん。
さらっとした黒髪が部屋の電気で艶やに見えてついつい見ちゃうけど、俺は今、翔ちゃんの部屋で正座しながら反省真っ只中である。
中間テストでまさかの赤点。今まで赤点はギリギリ回避してたのに、今回ついにやってしまった。そりゃあ今まで一夜漬けでなんとかイケてたくらいなのに、試験前夜、一番の苦手科目の教科書を開いたままぐっすり寝てしまったのだから点数をとれる訳がない。

「でも、俺サッカーでちゃんと結果残してるし・・・」

高校はサッカーの特待生枠で入学した俺は一年生の時からメンバー入りして、二年の今じゃ安定のスタメンだ。今まで大きな怪我もしてないし、大会は勝ち続けて学校にトロフィーも持ち帰っている。
翔ちゃんと違って焼けた肌に、日にさらされて傷んだ茶髪、頭の出来・・・ほんと、何もかも正反対だ。
俺の7点の数学の答案用紙をもう一度見て、裏返して、眼鏡をはずし、眉間をほぐす翔ちゃんは見るからに俺に落胆している。

「いや、だからってこれはねぇわ。だから学校だって追試させんだろ?」
「・・・うん」
「追試クリアしなきゃ、部活も試合もでれねぇんだろ?」
「・・・うん」
「じゃあダメじゃん」
「・・・うん」

あああ。
今の俺すげぇかっこわりぃったらねぇ。いくら学校や試合で女の子にキャーキャー言われたって、翔ちゃんにかっこいいって思われなきゃなんの意味もないのに。せっかく抜きん出た才能で翔ちゃんにいいとこみせたかったのに・・・。
自分のバカさ加減に泣けてきて、ずびっと鼻をすすった。
年下ってだけで、翔ちゃんにとって頼りになる範囲外だってのに、逆に追試の為に勉強みてもらうとかマジみっともない。

「もう、ほんとごめんん・・・」
「泣くな泣くな!大丈夫だって、俺が先公より分かりやすく重点的に教えてやるから」
「翔ちゃぁん」

ガバッと目の前の翔ちゃんの細い腰に抱きついて、薄い腹筋に額を擦り付ける。そのとき翔ちゃんがむせてたけど、ごめん、離れたくないし、まだまだ力を込めてぎゅっとしたい。
椅子ごと引き寄せるように、更に腕を回して身体に頬をぴたりとあてる。

「翔ちゃんって、バカ嫌い?」
「うん、そうだね」

がぁぁぁん!
俺の時は一瞬止まった。
でも翔ちゃんは俺の頭をワシャワシャと乱暴に撫でて、小さく笑ってる。

「頭悪いと話通じないし、疲れるし」

グッと額を強く押されて無理矢理顔をあげられてしまった。
あー、もうちょっと引っ付いてたかったのに。
でも視線が交わった翔ちゃんは優しい目をしてる。

「でも佑真は見捨てないであげるから」

仕上げにぽんぽんと後頭部を撫でられた。
ゴールを決めたときにメンバーからやられる称賛とは違う、翔ちゃんだけの優しい手のひらに、腹の底から熱く震える。

「バカな子ほど可愛いとも言うからね」

苦笑する翔ちゃんが手を伸ばして机の上からペンとルーズリーフを掴むと、離れろと言わんばかりに俺を蹴る。ローテーブルに俺のテスト、教科書、ワークブックを並べて眼鏡を改めてかけ直した。

あー、早くこの人の隣に胸はって並びたい。

「翔ちゃん!俺サッカー頑張るから、格好いいとこ見せるから、今度試合見に来てね!」
「はいはい。まずは追試がんばろーなー」
「はいっ!」
「返事だけはいいんだよな、返事だけは」



おわり



イメージとしてはイケメン脳筋わんこ高校生×平凡インテリ大学生。

小話 07:2016/10/01

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