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隣で眠る


 美味しいご飯をお腹いっぱい食べた後はいつもならば部屋に戻るはずだが、どうやら今日の少女はうつらうつら、と舟をこいでいる。昨日夜更かしをしたせいだろう、とその様子を見つめる男の眼差しはとても優しいもので。
 この時間帯ならば食堂も混んでいないため、しばらくはここで休ませてやるかと椅子に深く座り直したところで、よいしょ、と愛らしく少女が男の膝の上に座る。


「ん? どうした、オレを枕にする気か」

「テスカトリポカぁ……。ベッドに行きたいけど、眠たくって全然動けなくてぇ……」


 相当眠たいのだろう。舌足らずで今にも少女の瞼は落ちてしまいそうだ。それでも笑みを浮かべて少女は男にねだる。
 その台詞はカルデアで流行している、ゲームの中の登場人物を模しているもの。もちろんそれは男も知っていたため、くつくつと喉を鳴らして笑いながら少女の顎を擽った。


「随分と甘えん坊だ。それはそうと、対価は貰うぜ」

「うん。なんでもあげる」


 自分を運んでくれると明言したようなものだ。笑みを深めた少女は、男に抱き上げられるのを待っていたが、一向に時がやってこない。どうしたのかな、と不安になりつつも、男の温もりを欲した少女がこてん、と胸に顔を預けた。


「本当に可愛いヤツだよ、オマエさんは。で、なんでもしてくれんのか?」

「うんっ。テスカトリポカは特別だよ」

「いい心がけだ」


 よしよしと頭を撫でればうっとりと心地よさそうな表情を浮かべ、かくんと頭が落ちた。どうやら限界が来たらしい。男はしばらくの間少女の体を抱きしめて動かない。ようやく動き出したと思えば、ちゅ、と少女の頭に何度かキスを落としていた。
 すやすやと寝息を立てる少女の愛らしさを十分堪能した後、男は立ち上がる。少女程度の軽さならば軽々持ち上げられるので何も問題はなかった。安心しきった表情を浮かべる少女を見つめては甘い笑みを零す。

 ――己の傍が一番良いと感じている状況は、男にとって大変好ましいものなのだ。

 そっと少女の体をベッドに横たわらせ、男もその横に寝転ぶ。ふにふにと柔らかな頬を人差し指で軽くつつけば、むぅ……なんて愛らしい声が漏れて男はふっ、と微笑んでしまった。


「なんでもなんて、傲慢にもこのテスカトリポカに言えるのはオマエくらいだよ」


 顔にかかる髪の毛を優しく払いのけ、男は何度も少女の唇を堪能する。それでも全く起きる気配のない少女につられたのか、男は欠伸を噛み殺した。少しくらいならば問題はないか、と少女の温もりを抱いて目を瞑る。
 さて、どんなことをしてもらおうかと少女の反応を楽しみにしながら、男はひと時の夢に沈むのだ。
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