小話01
「私、テスカトリポカにとってはペットですし……」
「えっ!」
「えっ?」
あんなに独占欲をむき出しにして介入は許さないと言わんばかりに牽制して、オレのモノだと知らしめるように人前でキスを連発しているテスカトリポカ神が、彼女のことをペットだと思っているはずがない!!
しゅんとしょげている少女を遠目から見つけたテスカトリポカは、一直線にそちらへ向かう。
「オレのモノに手を出すとはクソ度胸か?」
睨みを利かすテスカトリポカを見て安心したように微笑んだ少女は、そっと彼の手に触れた。
「私、いい子で待ってたよ?」
「――あん? 命拾いしたな。チョコレートを回収してきた。オマエに食わせるために」
「あのチョコレート!? やった!」
目をキラキラ輝かせて微笑みを向けられたテスカトリポカは少女の指先を絡めるようにして手を繋ぎ、愛しい少女に話しかけていた名も知らぬ男を睨みつけながら部屋へと戻るのだった。
人前でも気にすることなく、テスカトリポカは私にキスをする。部屋からあまり出してくれなくなった彼は、私のメンタルがおかしくなる前に息抜きだと外に出してくれるのだけれど、なぜか見せつけるように私を可愛がるのだ。
恥ずかしくてやめてほしいと言ったのに意地悪そうに笑って、いやだが?と拒否されてさらに恥ずかしいことをされるので抵抗することを私は諦めてしまった……。
今日はなんと向かい合うように膝の上に座らせられて、頭を撫でられている。ちゅっちゅっとわざとらしくリップ音を立ててキスをされるし、羞恥とどきどきで頭がおかしくなってしまいそうだ。
「あ、あの……。テスカトリポカ、お部屋に……んぅっ」
「オレに意見するな。黙って可愛がられていろ」
ひどい言い草なのに、その表情はとても柔らかくて胸がぎゅっとなる。これが惚れた弱みというヤツか……!と少し寂しくなってしまったけれど。彼は私を愛玩動物として可愛がっているのだ。私の想いとは似ても似つかない。
せめてもの意趣返しでペットらしくぺろりとテスカトリポカの唇を舐める。すると、真顔になり動きを止めたテスカトリポカに対し、私だってやるときはやるんだよ!と睨むように見上げた。
その瞬間体をがっちりホールドされて酸欠になるまでキスをされてしまい、私は見事に返り討ちに合ったのでした……。