「凄いね、コレ。本当に貰っていいの?なんだか悪い気がするな。」



コサージュを手にとり見る。

全体的な色は白だが、白布と交互に網レースも使われていて、真ん中には薄い水色の丸ビーズが3つ。


本当に「綺麗」という言葉が会うものだった。





「売り物にはならないので…。まだまだ試作品…です。だから…」



そんなに凄いものじゃないんだ、と笑って言った。






あ。
良い顔で笑う人だ。





と思ったのはその時。


自分がしたいこと、やってることを認められ喜ぶ店員の顔を見て、つられて笑った。



「じゃあ喜んで貰います。また来るよ。この試作品が店に並ぶの楽しみにしてるねロロノア・ゾロさん。」




「え…名前?」




立ち上がりちょい ちょい、と名札を指差して笑ってやった。



「…じゃ、会計お願いします」




席から離れカウンターへ向かった時だ。お客さん、と呼ばれて振り替えると買った袋を差し出された。



「忘れ物です。」



気に入って買ったものなのに。貰ったコサージュはしっかり手にあった。


写真立てをすっかり忘れていた。



「ありがと…ね」



「…お客さん?」



「サンジ。」



「え?」



なぜか名前を知ってほしかった。お客さん、と呼ばれることで遠くに感じたこともあったけれど。



「名前。また来るよ。その時はお客さんから知り合いになってるでしょ?」



だからお客さんでなく名前で呼んで、そう言って店を後にした数年前のこと。





それからお客さんから知り合いに変わり、知り合いから友達へ。




友達からはまだ変わらない関係な僕らだけど。




大切な人へ変わる日も
近い気がする。




そんなことを今では行き付けとなったあの雑貨屋で、のんびり午後を過ごす。



あの頃と変わらない店の雰囲気。




違うのは 働く君とこの後一緒にご飯を食べに行く仲になった日常と、手作りのコサージュ達が売り棚に飾られていること。



ゾロに目をやれば腕時計を指差しパクパクと口を動かして「今上がるから」と控室に姿を消した。




過ごす毎日は少しずつ変化していて当たり前なんてことはない。




それでもこの穏やかな日常が手に入った今は、当たり前に感じてしまっていた気がする。




「罰当たりだな…」




今日は感謝して残りの一日を過ごしてみよう。




始まりはいつだったか。



思えば出会った時から惹かれるものがあった。きっとそれを人ば運命"と呼ぶのだろう。


少しそれを思う自分もいる。



名前から始まったあの頃からどれだけ君を知ることが出来ただろうか。





当たり前な日常も始まりがあっての日々だから。



そんな日に感謝する日があってもいいんじゃないか、と そんなことを思う午後。





すべて すべてに


ありがとう、
と思える今に感謝して。





心よりありがとうを。



今の日々をくれたすべてに。






「――サンジ?」




「あぁ、お疲れ様。行く?」



遅くなった、と謝られていたらしい。気付かなかったため(?)マーク付きで名前を呼ばれた。






「…ありがとねゾロ。」



「何で?何もしてないのに。」



「んー? 色々と、ね(笑)」



「変なの。」




「そりゃどーも。」



「誉めてねぇ(笑)」


瞬間 横で笑う君。


鼓動は跳ねる。 高々と。



「…ありがとうゾロ」




「??どういたしまして」



「ははっ まいった(笑)」







何度言っても足りないや。


END

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