始まりはいつだったか。
思えば出会った時から惹かれるものがあった。きっとそれを人ば運命"と呼ぶのだろう。
少しそれを思う自分もいる。
名前から始まったあの頃からどれだけ君を知ることが出来ただろうか。
当たり前な日常も始まりがあっての日々だから。
そんな日に感謝する日があってもいいんじゃないか、と そんなことを思う午後。
【すべて すべて。】
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晴れた空を見上げて外へ出た。
一人で無計画に出かけるのはそうないが、そんな気分だった。
しばらく雨が続いていたからかもしれない。外に出たくてしょうがない、という日はそれくらい珍しい。年に3回あるかないか、だ。
ちょっと
散歩をしたくなった。
ちょっと
店めぐりをしたくなった。
そんな感じにしたいことが増え、気付いたら電車に乗って乗り継いで。5個離れた駅で降りていた。
平日のこの時間はすいていて、人もまばら。今頃学生は勉強を、仕事をしている人はデスク等と向き合ったりしているのだろう。
そう考えると気分は快晴の空のようだ。
何度も足を運んだ場所も、今日みたいな気分の日には違って見えて、知らない裏道を見つけた。
始めての道に少しわくわくした。
しばらく裏道を歩いていくと雑貨が主なお店が並ぶ小さな商店街についた。
気になる店に入ると、そこは手作りの品を扱う雑貨屋でもあり喫茶店でもあった。
アンティークな家具や飾りがされていて、壁にはいくつか本棚があり絵本や建築・海外等の写真集、さらに小説までがずらりと並んでいた。
好きな雰囲気のお店だ。
飾られてる品を見て、こだわってるな、なんて見ていると惹かれるものがあった。
そこら辺じゃあまりないだろう個性的な作りの写真立て。
ガラス細工も施されていて、とても綺麗だった。
飾られている棚もまたそれにみあった作りで、写真立てを際立てていた。
シンプルなデザインだけれど、装飾は細かく。青を貴重としたもので、草花の模様が入っている。
ライトを受けて棚には青、緑といった模様が浮かび上がる。
飾るならあの写真だろう。
手にとり写真を思い、緩んだ口元に手を被せ笑った。
会計を済まし写真立てを包んでもらう。メニュー表に書かれたオリジナルの珈琲に目が行き、頂くことにした。
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お店の雰囲気を楽しみながらのんびり過ごす。写真立てをどこに飾るかを思案しながら、飾る写真を思い描いた。
仲間たちの大切な写真。
もう何年も前のだ。
今となっては中々会わない人も中にはいる。けれど写真はあの時の大切な時間を写していて。
見る度に思い出す。
楽しかったあの日のあの頃。
訳もなく一緒に笑って。
今でも続いて時間があれば会う仲間がいて。今頃なにをしているだろう。
「お待たせしました」
カウンターから店員が珈琲を運んできたところで思い出すのを止めた。
店員は失礼します、と前に珈琲を起き、その横に白のコサージュを置いた。
「初めて、の方ですよね?」
「は、い…えと?」
店員の意図が分からず見上げる。名札にはロロノア・ゾロとあった。
次に名札から顔をへとずらすと、緊張した面持ち。つられてかしこまる自分がいた。
「え、と。初めての方にはちょっとしたプレゼントがあって。これがそうなんですが、良かったら貰ってください。」
「へ〜!ありがとう。これもこの店の手作り?」
店員が曇った表情を見せた。変なことを聞いてしまっただろうか、と考えていると。
「それは…その。作りました。」
「…君が?」
曇った表情だと思っていたものから頬がうっすら色付くのがわかる。なんだ、照れてるのか。と、可愛く思えて小さく笑った。
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