演習開始前



演習の当日、事前に知らされていた集合場所は普段から……それこそ、昨日も使用した学院の裏にある森の入り口だった。
集合時間数十分前とは言え、結構な人数が集まってきている場所で流石にスケボーに乗ってはいられない。人が結構増えてきた辺りで降りて、スケボーを小脇に挟んだままきょろきょろと辺りを見渡した。

「那智、こちらですわ!」

聞き慣れた声の方を見ると、レティが片手を上げていた。何人かにすんません、通してくださいといいながら人混みをかきわけてそっちに向かう。
レティだけでなく、そこには既に淳史とフィオナがいてどうやら俺が一番最後だったらしい。

「おはようございます」
「おはよう。珍しいな、那智が一番最後なんて」
「まあ遅刻なさらなかっただけ良しとしますわ、ねぇフィオナ」
「えっ、あ、あぁ……おはよう、那智……」
「はよ、目覚ましの時間変えんの忘れてたんだよな」

がしがしと頭をかきながら、急いで準備をしてきた朝の状況を思い出す。こういうときはなるべく一番最初に来るよういつもよりも早く起きるつもりでいたのに。
今年度初の合同実践演習に出鼻をくじかれた感じは否めないが、レティの言ったとおり別に遅刻でもなんでもない。

「まあ、昨日色々あったしな。それに今日は佐倉がいるって連絡もきたし夜考えていたら目覚まし忘れてたとかだろ」
「……ん?」

……さくら?何のことだ? 淳史の予想外の言葉に首をかしげる。昨日のあれこれで色々考えていたから、今日目覚ましをかけ忘れたのは当たっているけど。
俺の反応が淳史の予想と違ったのか「違うのか?」と言われた。「さくら」って何だと聞こうと思ったら、淳史の背からひょっこりともう一人出てきた。

「……凪!?」
『おはよう、那智くん』

俺にメモを見せながら、少しはにかむ凪。「さくら」って凪の事だったのか。そういや名字が佐倉だったな……。
昨日対抗戦で戦ったばかりの友人に、朝の挨拶だけ返して「なんでいるんだ?」と素直に聞いたら、本人が困った顔をしながらメモに文字を書き始めた。
……が、そのメモを書き終わる前にレティから「ちょっとお待ちなさい!」と怒号が飛んできた。

「那智!あなたまさか昨日の連絡を見ていないなんて仰らないでしょうね!」
「……見はしたけどちゃんとは見てねえかも……」
「それを見ていないと言いますの!全く、それでもリーダーですの!?」
「うっせぇな!ちょっと疲れてたんだよ!」
「うるさいとはなんですのご自身の過失を指摘したまでですわ!そういうのを日本語で開き直りというのをご存じ!?」
「母語だ知ってるに決まってんだろ!悪かったとは思ってるよ!!」
「それが悪いと思っている殿方の態度でして!?」
「お前ら、今日は一年目の奴もいるんだたまにはそれ止めろ!」

淳史の一喝によって俺とレティはぐっと言葉を飲み込んだ。
周りは、何チームかはざわざわとした様子でこちらに注目しているが、何チームか……見知った顔の二年目のチームの奴らは呆れた様子で俺たちを見ていた。
誰かが「一年目のみんな、あれ17歳と二年目の名物だから慣れて」という声でちょっと笑い声が起きた。いや誰だ言った奴!見世物扱いすんな!!

「とにかく、ご自身できちんと確認なさって。話はそれからですわ」

そうレティに言われて、スマホから学院の連絡を確認する。
連絡用のアプリに昨日の昼過ぎ……対抗戦の直後頃の時間帯が最新だった。今日の実践演習についてのタイトルで、集合場所とかを再度連絡してる程度だと思ってざっくりしか確認していなかったものだったが……よくよく見てみたら、二年目全体ではなく個人宛に連絡が来ているものだった。
そこには「成績不十分生徒の同行について」という文面と、チーム五十嵐に同行するという佐倉凪の名前。
一年目の時は気にしてもいなかったけど、確かにそういう上の学年で成績が悪い奴が下の学年に混ざるっていうのは聞いていたが………まさか友人の凪がそうだとは、と思って凪の顔を確認すると、申し訳なさそうにうつむいていた。
昨日の試合を思い浮かべて……まあ、言ったら何だが成績不十分って言われると正直……ってところはある。

「なるほど、あー……まあ何だ。今日は同じチームとしてよろしくな、凪」

何というか悩んだ結果、俯いている凪に手を差し伸べる。
おず…という様子でその手を握ってから、凪はメモに『よろしくね。一緒なのが那智くん達でよかった』と書いて見せてきた。

「確認されまして?つまり今日は成績不十分の凪も同行なので9人での行動ですわよ」

俺がちょっと言うのをためらったのに、はっきりきっぱりとレティが「成績不十分」という言葉を結構大きな声でしっかりと言い放った。
改めて言われるときつかったのか、それは俺が見てもわかるぐらいぐっさりと凪に刺さってる。淳史の背で落ち込む凪をフィオナがぽんぽんと背をたたいて慰めていた。

「レティ……流石にもう少しオブラートに包んで言った方がいいぞ」
「あら……確かにそうですわね。ごめんあそばせ、凪」
「ったく、デリカシーがねぇな」
「那智にだけは言われたくなくってよ!!」
「あんだと!?」

レティと俺の言い合いが再度始まろうとした瞬間……「あーー!!」という、小さな女の子の叫び声が響き渡って中断された。
なんだ?と思って、声のした方振り返ると……ドっという勢いと一緒に俺の腹へ何かが衝突してきた。

「ぐえっ!?」
「やっと見つけた!那智お兄ちゃん!!」
「なん……のどか!?なんでいるんだ!?」
「えへへ〜」

まさかこんなところにいるとは思っていなかった人物に突撃されて困惑したが、突撃してきた方の本人は随分とご機嫌だった。

「那智、妹いたのか?」
「いや、俺の従兄妹だ。のどか久しぶりだな。自己紹介できるか?」
「うん!鈴森のどかです、よろしくお願いします」

ぺこり、と頭を下げるのどかに、淳史とレティ、フィオナも名乗って最後に凪を俺が紹介する。
凪が自分で何も言わないことにきょとん、とした顔でいるのどかにそれは置いといて、と地面に膝をついてのどかと視線の高さを合わせた。

「のどか、まさか学院に入ったのか?」
「うん、そうだよ!那智お兄ちゃんが入ったって聞いて、追いかけてきたの!」
「はぁ〜……まじか……怖いの苦手だろお前…魔物とか倒せるのか?」
「だ、大丈夫だもん!それに私が一番お姉さんだから、リーダーもしてるんだよ!ね、しずくちゃん……あれ?」

のどかが振り返ってチームメイトであろう「しずくちゃん」を呼ぶが、そこにはその名前にあたる人物はいなかったのか首を傾げている。
はぐれたのか……いや、というより今のどかが「一番お姉さん」って言わなかったか……?
まさかそんなことはないだろうと願っていると、遠くからのどかを呼ぶ声が四人分………どう聞いても声が幼い。三人ではなく四人な事も気になるが、幼い……!!

「あー!いたのどか!どこ行ってたんだよ!」
「わ〜ごめんひかるくん!探してたお兄ちゃんがいたからつい…」
「お前がのどかの言ってた「那智お兄ちゃん」?」
「かいりくん……年上の人をお前っていうのよくない…」
「のどかちゃんが無事見つかって良かったです!」

ちっっせぇ!!!
俺の前には5人の小さい子供がわいわいと言いたいことを好きに言っている状態になっている。ちまちまわらわらと、いやなんだこれ!!
のどかを呼んだのが赤い髪の男子…「ひかるくん」。
俺をなぜかじとっと見てくるのが緑の髪の男子の「かいりくん」。
それを諫めている少しおとなしい水色の髪の女子と、敬語で話している黒髪の女子……どっちかが「しずくちゃん」……なんだろうが……。
一人多くないか?と思ったが俺たちも実質一人多いからなんともいえない。
俺を置いて目の前でわいわいと盛り上がっているちびっ子どもに少しくらくらしてきた。

「……とりあえず、のどかのチームメイトと友達だな?全員一年目か?」
「そうなの。えっと、ひかるくんとかいりくん、しずくちゃんは私のチームキラキラの子達!それでこっちの紗智ちゃんが……」
「初めまして、私は祁答院紗智と申しますのです」

黒髪の女子はスカートの裾を持って、丁寧にお辞儀をした。その動作は何度かレティがしているのを見たことがある気がするが……。
まさか、と思ってレティをチラ見してみると「まぁ」と言ってから同じようにスカートの裾を持ち上げた。

「祁答院のご令嬢でしたのね。わたくしレイティア=アディアス=イグレシアスですわ。以後お見知りおきを」

普段の装いから一層、優雅な動きで自己紹介をするレティ。そういやこいつ貴族とかだったなと改めて感じてしまった。
あんなに大騒ぎをしていたちびっ子達は騒ぐのをやめたと思ったら、わ!と再度盛り上がる。

「お姉さんきれい……!」
「すげぇ!外人のお金持ち!?名前なげぇ!」
「ええ、ですがここにいる間はご学友として接してくださいまし。呼び名もレティで構いませんわ」
「貴族って本当にいるんだな…」
「わ、私も祁答院のレディです!」
「さっちゃんは友達……」
「うう、それは嬉しいですが〜!」

再びわいわいと盛り上がるちびっ子達。レティが相手をしている横で、そのちびっ子にすらびびっているのは淳史の後ろにいるフィオナと凪……。
いや、お前らびびってどうする子供に。勢いに圧倒されるのはわからんでもないが。
レティが五人とも相手をしてくれているので、俺は淳史達の方に移動した。

「な…那智……」
「フィオナは小さい子とか得意じゃないのか?」
「い、いや……。その……会話、に…ついていけない…」

申し訳なさそうにするフィオナに、あ〜〜と納得した。
あんなわー!と勢いのみで言われたらそらそうだ。フィオナはまだ聞き取りは不得意だしな……。
一先ずフィオナに、五人の髪の色と名前を一致させるように俺から再度名前を教える。そこから……のどかは確か今年で11歳だったことを思い出して、あの五人の年齢が10歳以下であろうことを察する。

「あの年のチームっているもんなんだな」
『僕達チーム出雲も、一年目の時あのぐらいの年齢だったよ』
「………確かに考えたらそうなるな?」

凪は17歳で八年目。昨日みた三人もそんなに年が離れてるようには見えなかった。
俺の周りのチームにいないだけで、めちゃくちゃ珍しいってわけでもないのか……?
少し考えながら眺めていると、のどか達は何かを話し合って突然盛り上がったと思えば、男子二人が「じゃーな那智お兄さん達!」と言いながら走り去っていった。

「あ、待ってよひかるくんかいりくん!那智お兄ちゃん、またね!」
「ばいばい……」
「おう、とにかく怪我にはなるべく気をつけるんだぞ」

二人を追いかけて去って行くのどか達。残されたレティは、ふぅと一つため息をついた。

「何に盛り上がってたんだ?」
「ご自身のミドルネームを考えるそうですわ」
「あ〜、やるやる。外人なんて近場に出てきたらやるな」
「そういうものですの……?」
「そういうものだと思うです!」

レティと俺の会話に入ってきた、残ってるちびっ子一人。
腰に手を当て、ふんす!という感じでいう……けどういん?のご令嬢とやらはさっきの走り去る中には入らなかったらしい。

「で、レディの自分はチームの奴らどこ行ったんだよ」
「はっ…それは……っ」
「お嬢様ーー!!」
「うおっ!?」

突如やってきた執事服の男が祁答院の子に抱きついて抱きかかえた。
次から次へと何なんだ今日は!!

「ここにいらしたのですねお嬢様!私たちがどれほど心配したか……っ!!すみません私がしっかりしていないばっかりにお嬢様とはぐれてしまって………。はっっ!!お前か!!お嬢を連れ去ったのは!!」
「はぁ!?」
「陽輝違うのです!お友達のお兄さんなのです〜!」
「なんだそうでしたか……それよりもお嬢様お怪我とかは…」

いきなり喧嘩売られたかと思ったら一瞬で無視されてるんだが!?
目の前でめまぐるしく起こる出来事に脳が処理しきれない。なんだこいつら。執事とお嬢様ってこんなもんなのか………?
レティにそれとなく、そうなのかという感じで視線を送ったら「これは異常ですわ」と言わんばかりに目を伏せて首を振った。

「わぁ〜!陽輝くんも紗智お嬢様もやっと見つけた〜…!」

今度はへろへろとした足取りでメイド服の女がやってきた。その姿をみて淳史が「あ、昨日の」と呟く。

「…あ!昨日の親切な方ですね。お嬢様がお世話になったようでありがとうございます」

ぺこり、とメイドが頭を下げた。昨日の……というので、そういやメイド服の女に今日のことを聞かれたとかなんとか、淳史が言っていたな……と会話を思い出す。
しかしお嬢様に執事服にメイド服……本当にここは学院か?って感じの面々になってきた。

「那智お兄様、レティお姉様、お世話になったのです!私たち、チームお嬢様というメンバーですのでもしご一緒する時はよろしくお願いしますです!」
「あ…ああ……」

頭を下げる祁答院の後ろでじろり、と睨んでくる金髪の執事が気になって仕方が無い。
正直ご一緒あまりしたくねぇな……というのが本音だった。
どうやらこの三人でチームらしいが、もう一人はどっか別の場所にいるかまだ探しているんだろうか。身内だけでチームになるときは完全に身内みたいな時もたまにある。というかこの中でもう一人が身内以外だと正直居づらそうだなと勝手に思ってしまった。

「誉くんも、お嬢様がよろしくって言ってるんだしせっかくだから挨拶したら?」

メイドが木のほうに向かって声をかける。その木の方をみやると、葉ががさがさと音を立ててそこからまた一人、執事服が飛び降りてきた。
執事って言うかどこから見守ってんだよ。忍者か。
色々突っ込みたいところをどうにか抑えて、歩いてくる執事の「誉くん」を見る。
灰色の髪に金色の……少し猫のような目の男だった。

「……どうも…」
「……?」

一言だけいって、頭を軽く下げたらそのまままた木の上に移動した。
妙な違和感というか……既視感を感じた気がするが、あまりにもすぐいなくなったので確認は出来なかった。

「それでは、私たちは失礼するです」
「ああうん、じゃあな」

移動していく三人と、それを追いかけるように木が少し揺れていくのを確認してはぁ〜〜〜〜とでかいため息をついた。

「つっっかれた……!」
「怒濤でしたわね……」
「今年のやつら濃いな…」

淳史の言うとおり、本当に濃い。たった2チームとしか合っていないのにめちゃくちゃに疲れてきた。子供相手だからっていうのはあるだろうが……!

「そういえば先ほどの執事の方……栄に似ていましたわね?」
「……それだ!!」

レティが呟いた言葉に、納得した。確かに似ていた。同じ年の猫耳フードをよくかぶっている栄にそっくりだったんだ。
妙な既視感に納得がいった。「ご兄弟等という事って聞いたことありまして?」と凪に質問するレティだったが、凪は首を横に振った。
凪の方が栄と仲がいい…というか、入った年数的に付き合いが長いがその凪が知らないとなると、他人のそら似の可能性もあるな。
まあ、他人の詮索なんてあまりよくないし……これ以上別に広がる話題でもなかったタイミングでガガーっというメガホンの機械音が聞こえてきた。
その音に反応して、そちらを見るとメガホンを持った櫻井が立っていた。

「あー、全員揃ったみたいだから説明を始めるぞー。時間が勿体ないからな、準備運動なりしながら聞け」

どうやらあの騒ぎで、結構な時間がたっていたのか既に集合時間になっていたらしい。
少しどこか間延びした言い方の櫻井の言葉を聞いて、軽く準備運動を始める生徒達。俺達もそのまま従って、各々腕や足をストレッチし始めた。

「一年目の連中は今回が初めてだからな、少し細かく説明するぞー。まあ基本的なところは分かってるだろうが、一応な。今回の実践演習はそれぞれ一年目と二年目のチームで合同チームを組み、合同チームで倒した魔物の数を競ってもらう。制限時間は三時間。終了した際には合図を上げる。合図が上がった以降は魔物を倒しても点数にはならないからな、気を付けろよ。まあ初めてなんだ、一年目の連中は二年目の肩を借りるつもりで気軽にやれ。二年目はちゃんと一年目を見てやれよ」

櫻井の言葉を聞いて、少し身が引き締まる。去年まで面倒を見てもらっていた俺達が、面倒を見る側についになった。
自分たちが一年目の頃を思い出して、ちゃんとあのチームに面倒見てもらえて助かったと思えるようにはなりたい。

「お前らの手こずりそうな魔物はあらかじめ団員の先輩が枝払いしてくれているとはいえ、魔物は魔物だ。油断はするなよ、現場の戦況は常に変わる。何が起きるか、なんて分からないからな」

去年の演習を思い浮かべて、うんうんと頷く。こうしよう、ああしようと考えていたってそれ通りにいくことはほとんど無い。
周りにいる一年目であろうチームからは緊張感が漂ってくる。面倒をみるという責任を持つ側になった自分も、その緊張感を肌に感じてつばを少し飲み込んだ。

「それじゃあチームの組み分けを発表するぞ」

その言葉によく耳を傾ける。二年目は知っている名前も多いから、あそこと一緒になるのはどんなチームなんだろうなと少しだけ考えながら聞いている。

「一年目、チームエイク。……二年目、チーム納豆食べたい」

一年目がそろった後に、訳のわからないチーム名が呼ばれて納豆食べたい…?と少しだけざわつく。
二年目の俺達は、去年度末もそのチーム名のままだったことを知っているので「そうか今はまだ納豆食べたいままなのか神崎…」となんとなく察した。勝手に食えよ納豆。

「一年目チーム黒白。……二年目チーム名決まらん」
「夕介のところですわ」

よく一緒にいることもあるからか、レティが反応した。そこにいるメンバーを見るとそこそこ年が似通ったメンツだった。
しかし夕介のとこもそれなりに目立つチームだな。女子3人にしか見えねぇし。

「一年目、チームキラキラ」

櫻井の声に、先ほど聞いたのどかのチーム名が出てきて顔を上げる。やっぱりちまちまとしたチームで見てて心配になってきた。頼むから年齢がそれなりに上の面倒見の良さそうなところと当たってくれ…!と祈ってしまう。

「二年目、チーム不屈の魂」

チーム不屈の魂。そこまで交流はなかったチームだが、大人2人に俺と同じぐらいか年下の奴が1人、あとはのどか達と同い年そうな子が1人と集まってくるメンバーをみて少しほっと胸をなで下ろした。
確かあそこのチームの仲は悪くなかったはずだし、のどか達が変に邪険にされる可能性も少ないだろ。

「よかったな、那智」

ほっとした俺を察したのか、淳史が耳打ちをしてくる。

「まあな…本音を言えばのどかは学院に来ずに普通に過ごしてほしいけどな、本人が頑張るなら止めれねぇし」

そういう会話をしていると、今度もまた先ほど聞いたチーム名「一年目、チームお嬢様」という声が聞こえてきた。続けて「二年目、チームGALAXY」とも言われて自分たちではないことにもちょっとほっとした。
なんかあの金髪の執事に妙に睨まれてたしな……。

「一年目、チーム東西南北」
「はーい」

呼ばれていないチームが大分減ってきた。今呼ばれたチームを見ているとその内2人は年齢別で見かけたことがある気もする男女だった。

「二年目、チーム五十嵐」
「はい」

ようやく呼ばれた。ほかのチームと同じように櫻井の前にいく。先に来た一年目のチームを見る。
呼ばれたときにゆるめの返事をしていた、年齢別で見たことがある黒髪の男子。
かなり長い茶色の髪をした、緊張している様子がよくわかる同じく年齢別で見たことがある女子。
のどかよりもさらに淡い桃色のゆるく癖がついた髪の、落ち着いた雰囲気の女子。
青緑の髪をしたでかい銃…スナイパーライフルかそいうのを背負っている男子。
結構全員俺達と年齢は近そうだな……と思ってると、おそらくチームのリーダーであろう黒髪の男が俺を指さして言った。

「学年別で頻繁に金髪美人と痴話喧嘩しまくってる奴!!」
「痴話喧嘩じゃねぇ!!」
「それはわたくしと那智のことを仰ってますの!?心外ですわ!!」

俺とレティでほぼ同時に反論すると、おおう…と引かれた。
自己紹介も始まる前から、若干幸先が不安になってきてしまうが……二年目、初めての先輩としての実践演習が幕を開ける。

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