遊佐要という男


へらりとした表情で、同い年の私にも敬語。誰にでも敬語。
飄々としていて掴みどころがなく、人と話すのはそこそこに好き。だからといって深く介入してくるわけでもなく、自由気ままに生きている。

なんとなく、自分と似てる気がした。から、それなりに興味がわいた。




「こんな日向で何してるのかな要くーん」
「…ああ、りなさんじゃないですかぁ」

日陰を好む彼にしてはかなり珍しく、暖かい日差しが浴びるベンチに座っていた。
ベンチの後ろからのぞき込んで彼の様子を見てみると、相変わらずへらりとした表情が返ってくるからこっちもいつも通りへらりと返す。

暑いですねぇ そうだねぇと他愛のない会話をしてもう1度なんでこんなところに座ってるのか聞いてみたら、彼の視線が私から外れて前に行ったからそのまま同じところに目を向ける。

そこには男女が2人ずついて、わいわいと手合わせをしていた。誰だっけ、えーっと、見たことある気がする。

「あずささん達ですよぉ、チーム及川の」
「ああ、そうそう〜。要くんの彼女ちゃんだっけ」
「ええ、まぁ」

特に照れてる雰囲気もなく、いつものへらりとした表情で返答が返ってくる。
さっきまであの中にいたけれど、少し疲れたからベンチに座って見守ってるとかなんとか。

「彼らは元気ですよねぇ、特に及川くんが」
「そうだね〜あれはもう暑苦しいの域だけどね」

まだベンチの後ろ側にいる私は、背もたれの部分に肘を置いて頬杖つきながら四人を眺めてる。
ちらり、とかなめくんを見てみれば、彼女がいるからかいつもより優しそうな目で眺めてた。

ああ、これは。

「ねー、要くん。君はあずさちゃんのことちゃんと好きなんだよね?」
「いきなりですねぇりなさん。自分が好きじゃない人に興味でないの知ってるじゃないですかぁ」
「それ友香の時と同じ感じ?」

彼女達に送っていた視線が、こちらに向く。でも相変わらず表情はへらっとしたままで、そう簡単に読み取る事は出来ないきがする。

「同じかどうか聞かれると悩みますけど、似たようなものですかねぇ」
「ふーん」
「聞いておいて興味なさそうですねぇりなさん」
「まぁそこには特に興味ないからね〜」

よっこいしょ、と背もたれを跨いで彼の横に座る。
パンツ見えますよぉ、なんてデリカシーのないことを言われたけど今日はズボン履いてるから大丈夫と適当にあしらった。

「それで、また唐突に嫌われたくなるの?」

さっきまで上から見ていたけれど、今度は下からのぞき込むように彼を見上げる。
少し驚いたりなにか表情が変わるかな、とか思っていたけどやっぱりというか予想通りいつもと特に変わらない表情のままだった。

「そうですねぇ。今は現状が楽しいですから特にそう思いませんけど明日は分からないですよねぇ」
「ふーん」
「りなさんはご質問の答えに興味あるのかないのかどっちですかぁ?」
「どっちも〜」
「相変わらずですねぇ」

お互い様だと思うなぁという気持ちを全力で表情と視線にして彼を見ると、案外伝わったのかいつもとは違って少し楽しそうに笑った。
そこで私に向けていた視線がまた外れて、それはまだまだ手合わせを続けるチーム及川へと向けられる。

「…自分は、ああいう人たちの好意的な感情ってあまり好きじゃないんですよねぇ」

ここで初めて彼自身からこの話題の話を切り出された。
知ってるぅ、と答えるとですよねぇ、とゆるい会話が繰り広げられる。

「ほら、自分ってこうですから友香さんやあずささんみたいな方に惹かれやすいんですよぉ。
だから余計に普段持たなさそうな感情持って欲しくなるんですよねぇ」

かなめくんはへらへらといつもと変わらない。
多分これを友香が聞いたら全力で何か言いそうだろうけど、それこそ彼の思う壷なんだろうなぁ、とか。

「あの誰でも好きになる友香さんが特別嫌いって反応するのって、自分だけじゃないですか」

歪んでるなぁ。
少し嬉しそうに言う彼を表すならこの一言で充分だと思う。

「変態だよね要くんって」
「恋なんて変と似たようなものですよぉ」

それは変態を認めてると捉えていいのかなぁ、要くん。

少し離れたところから、要くんを呼ぶ女の子の声が聞こえてくる。ずっとのぞき込んでいた彼からそっちに目を向けると、あずさちゃんが要くんに向かって手を振っていた。
要くんはひらり、とそれに手を振り返したらベンチから立ち上がってそっちに歩いていく。


「あの子の好きは友香と違ってちゃんと要くんにだけの特別な好きだと思うよ〜」

向こうにいる四人に聞こえない程度に、離れていく要くんに聞こえる程度に声をかける。

「知ってますよぉ」

それだけ返してひらり、と手を私に振ると向こうに歩いていった。

普段チームにいる時より数段人間味溢れる笑顔で話している姿を見ると少しほっとする。

「彼女さーん、そのへらへら男が変なことしないようちゃんと首輪つけててね〜」

なんて、聞こえないだろうけどとりあえず言っておく。

あの時わいた興味からか、彼をもう少し観察したいなと思うけれど、分かればわかるほど歪んでる。

「好きな人に特別に思われたいから嫌われるなんて、正気の沙汰じゃないよ」

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要が友香にちょっかいだす理由とかをかきたかったらなんかこうなった

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