レティvs真緒


「フィオナ、もう大丈夫ですの?」
「あ…ああ…、もう、何ともない……」
「よかった」

5分間の休憩で、フィオナは大分回復した。支えなしに立つとまだ少しふらつくみたいだけれど、試合が終わった直後に比べたらましだった。
少し背伸びをして自分よりも十数センチ背の高い彼女の頭を優しく撫でる。少し照れながら俯くフィオナに、思わず小さく笑みがこぼれた。

「フィオナと淳史のお二人が引き分けにしてくださったんですもの。次は私が勝って、チーム全体の成績は負けにしないようにしますわ。那智が負けていなければ、」
「しつっけぇっての!!」
「事実を言って何が悪いんですの!」

再び那智と言い合いが始まった。瞬間、後頭部に衝撃が。誰に何をされたのか、もうこの二年という間ですぐに理解出来るようになった。けれど、やっぱり暴力的なのはあまり許せませんわ……!!

「時間だってのにくだらねえことで言い合ってんじゃねぇよ!!」
「もう!淳史はすぐに殴るのお止めになったらどうなの!?」
「お前が余計なこと言わなきゃ俺まで殴られねぇんだけどな」
「私のせいだというの!?」
「ふ、たりとも……!」
「だああああ!!喧嘩は後ださっさと試合行ってこいレティ!」

確かに時間だし、なんだか腑に落ちないけれど渋々フィールドの中に入る。もうっ、那智と淳史にまだ言いたいこと沢山あるというのに…!
試合が終わったら沢山言わせてもらおう。そう心に決めてフィールドの中心へと歩く。

手前からは、見慣れた女の子が少しおびえながら私と同じように歩いてくる。

「頑張れ真緒!おいレティ!真緒怪我させたら承知しねぇからな!!」
「りょ、遼征くん大丈夫だよ!試合なんだし怪我するのが普通だから…!」
「そうですわ。お互い本気で戦って、負けても恨みっこ無しですもの」

強くなるためですものね。と言って真緒にウインクするとはにかみながら頷いてくれた。



「それでは、三回戦試合開始!!」

今日三度目の審判の声が響き渡る。

ばさり、という羽ばたいた音と一緒にフィールド内に風が巻き起こる。腕で風をしのいでいる隙に、すでに真緒は背に大きな翼を生やして遙か上空に。
ふわり、ふわりと真っ白な羽根が舞い落ちた。

服の中に隠し持っているポーチから、一つ種を取り出して強く握りしめる。私の手を中心に植物の蔦が伸びてあっという間に弓と矢ができあがった。

「逃がしませんわ、よ!」

細い蔦で出来ている弦を力強く弾いて、放つ。同時に空中から無数の羽根で出来た小さな刃が降り注いできた。
地面を駆けてその白色の刃をよけつつ、放った矢の行き先を見守る。

「きゃっ」

蔦で出来た矢は真緒に一直線に向かっていたけれど、当たる直前によけられる。けれど、攻撃は失敗じゃない。
避けられる事が狙いなのだから。

矢が真緒の背後に回った瞬間、"矢"の形が解かれて数本の蔦に姿を変えた。それと同じタイミングで真緒は矢を一本撃っただけで何もしてこない私に疑問に思ったのか、後ろを向く。

遠目だけれど真緒の顔がさぁ、と青くなったのが分かる。

「えっ、きゃあああ!!」

蔦は真緒の体と翼の付け根に絡みつく。宙に浮くための手段が縛られてしまった彼女は、そのまま地面に急降下を始めた。それに合わせてまた別の種をつかみ取り、今度は真緒が落ちてくる真下へ向かって投げる。
あっという間に蔦と葉のネットが出来上がり、そのままぼすんっとネットが真緒をキャッチした。

「ふ、ぇええ……」

「試合終了!三回戦はチーム五十嵐の勝利!」

蔦でグルグル巻きにされて、目を回している真緒を見た審判はそれを叫んだ。ふぅ、と一つ息を吐いて真緒の元に歩み寄り絡みついている蔦やネットを種に戻す。

「どこか打ったりしてません?」
「だ、大丈夫っ。はぁ負けちゃった…やっぱり能力が緑の人と相性悪いのかなぁ……?」
「やっぱり?」

手を引いて真緒を立たたせて、体に付いた葉や砂埃を軽くはたいてあげる。
少し半泣きになりながらため息をつく真緒に首を傾げた。つい最近までそんなことを聞いた覚えはあまりないのだけれど……。

「あ、えっとねこの前も緑色の能力の人と当たったんだけど……全然敵わなかったんだ。それにちょっと怖くて思わず泣いちゃったら、えっと……な、なんだか楽しそうにされて……」
「……その方、黒髪で色黒の男性ですの?」
「え?うん、そうだったけど……お友達?」
「……年齢が同じで同じ能力だから知っている、という程度ですわ……」

真緒の話の男性と思い浮かべた人物が一致したようで、少しため息。彼が泣き顔好きという変態染みた趣味を持っている、という噂を聞いていたけれど本当だったのね……。
ため息をついていた私のことを心配そうに見ている真緒。それに気がついて少し笑ってから彼女の頭を撫でた。

「とにかく、緑の能力との戦いを克服したいのでしたらいつでも声をおかけになって。力になりますわ」
「……えへへ、ありがとうレティちゃん!」

落ち込んでいた表情はどこへやら。真緒はぱぁっと明るい笑顔を見せた。




「……それでは、チーム五十嵐対チーム納豆食べたいの対抗戦はお互い1勝1敗に引き分けという結果で終了です」
「「「「「「「「ありがとうございました!」」」」」」」」

8人の礼をする声が重なる。

全員でフィールドの真ん中に集まって相手に礼。これにて一つの試合が完全に終了。



チーム五十嵐対チーム納豆食べたい。引き分け

(で、余った時間どうするよ)(ボク、ルカの応援に行く約束してるからじゃあねーん)(俺もリリアの応援行こうかな)(じゃあ暇だし俺琴音に付いていく)(わ、私も……)(私は……先ほど夕介に会いましたしそっちに行きますわ)(あ、じゃあレティちゃん私と拓さんも行くよ!)(……五十嵐は、どうする?)(怪我がいてぇから休憩して適当に知り合いの所回っとく)

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