淳史&フィオナvs遼征&琴音


フィオナと並んで、フィールドの真ん中に向かって歩いていたら、後ろからレティと那智の声が聞こえた。
振り向いて見てみると、いつも通りの言い合い。あいつら毎回飽きないのか、と少しため息がもれた。

「あっれれー?淳史クンってばため息なんかついて、ボクたちに勝つ自信なさげ〜?」
「まあ能力開花してない上、丸腰のやつが俺達に勝てるわけねぇけどな」

仁王立ちで俺達の前に立ってふふん、と鼻を鳴らす叶野と片桐。
ちげぇよ、と一言だけ返してもう一度軽くため息。俺、一応こいつらより歳三つは上のはずなんだけどな……。まあこの学院に年齢なんてほぼ関係ねぇけど。

自分の武器は基本大剣を使うが、人間相手の対抗戦にそんな物騒なモン持ってこれるわけもない。あれは対魔物用だしな。
肉弾戦には自信はあるが……確か片桐も能力より肉弾戦派だったな。気合い入れてかねぇと。

「フィオナ、俺が能力つかえねぇ分しっかりサポート頼むぜ」
「もちろん、だ。……私が出来るのは、これだけ…だから……」
「だぁっから!そういうのはいらねぇっつってんだろ!!」
「わっ」

フィオナの頭を掴んでわしわしと頭を撫でて、髪をぐしゃぐしゃにしてる。
ったく、いつまで経ってもこいつは自分を下げまくりやがって……。



「それでは、二回戦試合開始!!」

審判の声と共に、片桐が俺の懐まで飛び込んできた。ナックルを嵌めている片方の拳を、飛び込んできた勢いのまま俺に向かって突き出して来た。

相変わらず神埼といい、このチームは先制攻撃派だな!と心の中で舌打ちしてその拳を横に受け流す。
受け流したことで片桐に隙が出来、その隙を逃さず蹴りを入れようと地面から足を離した。

「駄目だ!蹴るな淳史!!」

いつもより一際大きなフィオナの声。その声に驚いたけど、指示通り脚を止めようとした。が、勢いに乗った脚は制御出来ず、そのまま片桐の体に吸いつけられるように向かって行く。当たる直前に、片桐が口角を釣り上げたのが目に映った。

「っ!!」

俺の脚が片桐に触れたその瞬間、片桐が炎に包まれ、脚が焼けるぐらい熱くなる。
その熱さに思わずたじろんで、少し後退してしまった。やべえ、攻撃される…!

ガードを取りながらぐっと目を瞑り、片桐の攻撃を耐える構えを取った。
しかし、俺に襲ってきたのは打撃の衝撃じゃなく、冷たい水がばしゃりと覆いかぶさった。その水は片桐も被っていたようで、纏っていた炎には消え去っていた。

「つっめて……うわっ!?」

慌てて体を乾かそうとしていた片桐の周りに、バチリバチリと小さな静電気のようなものがまとわりついていた。
この隙に、と思ったが、水のせいかこっちも少し電気が伝わってきて、今片桐に近づくのは少し危ない。俺はバックステップで片桐と距離を開け、後ろにいたフィオナの横に移動する。

「わりいな。さんきゅ、フィオナ」
「す、すまない…淳史、まで……水を被らせて…しまって……」
「だぁっから、なんでここで謝んだよお前は!!」
「う…っ、す、すまない……」

先ほどの大声はどこへやら。またしょぼくれた態度と表情で俯くフィオナ。
はぁ、と一つため息をついて片桐達の方を見る。

「もーうっ、遼征ってば何してんのさ〜!」
「うっせ!何で見てるだけなんだよサポートしろ !!」
「え?ほら琴音ちゃん平和主義だしー?戦いって向いてないしぃー?
ボクは遼征応援団だからね!ほらみてよこの新しいトランペット!これで盛り上げちゃうから頑張ってねーん!!」

じゃじゃーん!と叶野が口で効果音をつけて取り出したトランペット。すう、と息を大きく吸って、それを吹こうとした。
瞬間、「耳を塞いでくれ!!」と叫ぶフィオナの大声のすぐ後に一瞬で大きな雨雲が現れ、瞬く間にどす黒い雷雲へと変形した。

雷の轟音とトランペットの爆音がフィールドに響き渡る。

「………っ!」

反射で耳は塞げたけれど、人の手でどうにかなるような音量じゃねえ…!
びりびりと震える空気を肌で感じながら、酷い耳鳴りに耐える。横でどさり、と音がして見てみたらフィオナが目を回して地面に倒れこんでいた。

「フィオナ!?」
「琴音っ!!」

俺と同時に、片桐が叫んだ。フィオナを抱えながら目をやると、同じように目を回してぐったりしている叶野がいた。
何が起こったんだ、と混乱していたら審判の「同時に倒れたため、引き分け!」という声が響き渡る。引き分け…か……久々になったな…。

「…んん…っ」
「琴音!大丈夫か!?」
「うぇぇ…体が痺れるよぉぉ〜……」

目を回しながら痺れている叶野の発言に、俺と片桐は首を傾げた。確かにフィオナは雷を使ったけど、雷の音だけ利用しただけで、それを落とした様子はなかった。
気絶していたフィオナが、少し呻きながら目を開けた。重そうに頭を抱えて

「…っ、琴音…す、すまない……咄嗟に雷と、一緒に…軽く電気を流してしまった……」
「な、なんで僕がトランペットで気絶させようとしたの分かったのもぉぉ……フィオちゃん器用すぎぃぃ……」

もう一度すまない、と謝るフィオナ。細かく能力が使えない片桐と、能力自体が使えない俺には少しついていけない会話だった。
どうやらフィオナが気絶したのは、雷の音で叶野の能力を相殺しようとしたらしいが能力で震えさせられた空気は消しきれずに攻撃を受けたらしい。ただ、負けるのは避けるために気絶する直前に叶野の体に軽く電気を流した、らしい。
とにかく試合は終わったし、まだちゃんと立てないフィオナに肩を貸して、那智達がいる方へ歩く。

「……本当に器用だなフィオナ…。その間、ほんの数秒しかなかったぞ……」
「そ、…そんな、こと……。……まだ、私の力…では、あの人を見つけても……足手まとい、になる…だけだ…」

あの人、というのは例の捜し人のことか。恐らくもう討伐団だろうし、魔物相手なら対抗戦の時みたいに相手に気を使うこいつの性格は特に問題ねえだろうし…。教師にも充分卒業出来る実力だと言われてんのに、本当こいつは自分に自信ないな……。
はぁ、とため息をついたらまた謝ったきた。

「ったく……お前のお陰で引き分けになったんだから謝んなよ」
「し、しかし……」
「だからなぁ……」

はぁ、とまたため息。実際今回の対抗戦で足を引っ張ったのは能力を使えねえ俺だから、フィオナに強く言えねえ。


「強く、ならねえとな…」

俺が呟いた言葉に、フィオナも小さく頷いた。


二回戦引き分け

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