休憩2
(地の文少なめ会話多め。口調と絡み方の間違い指摘大歓迎。
借りたお子様:ワトソンさん、夕介くん)
「塗り薬と包帯、ありがとうございますワトソンさん」
「いやいや。あまり大きな怪我のないようにね」
医務室に行く途中、学院を訪れていたワトソンさんに偶然遭遇した。少し駄目元で持っていないか聞いてみたら、丁度ほんの少し薬などを持っていたようで譲ってもらうことに。
ワトソンさんに一礼して、小走り。全く、休憩は5分だというのに…早く戻らないとフィオナと淳史の試合が始まってしまいますわ!
「そこの美しいお嬢さん!お嬢さんも今から対抗戦?」
「ん…?」
少し離れた場所で話している声に、思わず足を止める。聞いたことのある…というか、聞き慣れた声。そして正直聞き飽きてもう聞きたくない台詞。
その話し声がする方を見てみる。と、ああやっぱり。
早く戻ろうと思っていた気持ちはどこかに行き、向かったのはその声の人物の元。丁度話しかけていた女性も、少し戸惑った表情をしながらその人物から離れていっている。
「あらら…フラれた…」
「夕介!!!」
「げっ、レティ嬢!?み、見てた…?」
「ええ、声をかけている所から!貴方って人は何っっ度言ってもこりませんわね!!そういう所本当に嫌になりますわ!!」
「ごめん!ごめんってレティ嬢!!これには訳がっ」
「言い訳は見苦しいだけですわ!今度見つけたらすぐさまヒールで踏まれたいの!?」
「それは勘弁願いたい!!……ん?」
夕介の視線が、私の抱えていた包帯と薬に行った。途端、みるみる夕介の顔が青ざめていく。
「怪我したのかレティ!?どこ、どこを怪我したんだ!どこのどいつにっ」
「わ、たくしじゃなくて那智ですわ。だから落ち着きなさい…!」
「何だ……那智か、よかった……」
ほっと胸をなで下ろす夕介。今は対抗戦の時間だし怪我なんて付けて当たり前だというのに、ここまで過度に心配されるとこっちまで焦ってしまうからやめて欲しいですわ…。
「誰と戦ったんだ?」
「那智は神埼拓とですわ」
「あー、拓さんな。そりゃ負けるな。レティ嬢は?」
「私は三回戦だからまだですわ。おそらく真緒と当たるでしょうけど…」
「え、レティ嬢対真緒ちゃんとか何それ天使の戦い?すげぇ見たい俺天に召される運命たどりそう」
「また訳の分からないことを…」
はぁ、とため息をひとつ。
ふと腕時計を見てみると、時計の針は随分進んでいた。試合の後は5分の休憩。その5分がもう経とうとしている。
「夕介、私もういきますわ!」
「お、じゃあ俺もフィオナちゃんとレティ嬢の応援に…」
「貴方は自分のチームに戻って準備しときなさい!ほらお迎えが来てますわよ!!」
「うっそまじ」
私が指を指した方向には、きょろきょろと誰かを捜している夕介のチームメイト零の姿が。
捜している誰かは、私が思っていたとおり夕介。こちらに気がつくと真っ直ぐ向かってきた。
「それじゃあ夕介、ナンパの件はきちんと反省していなさいよ!!!」
「それは本当ごめんって!!」
試合怪我すんなよ、という声を背に自分のチームの方へと走っていく。
「おっせぇよレティ」
「持ってきてもらってその言いぐさは失礼じゃありませんの!?」
「自分から行くっつったんだろ!」
フィールドに戻ってみたら、先ほどいた他のチーム達は既に居なくなっていた。そして那智の横にはフィオナと淳史の姿もいない。
丁度フィールドの中に入っていったところだった。
「フィオナの言ったとおり、片桐と叶野のコンビだな」
「ええ、二人とも那智のように無茶しないよう願いますわ」
「掘り返すなよ!」
「事実ですわ!!」
那智と言い合いをしていると、審判の「試合開始!」の声が響き渡った。
(第二回戦、開始)