編成初日の話
編成によって振り分けられたのは、見事に全員初対面。人によっては知り合い同士も多いと聞いていたけど、完璧に初対面だ。
しかも女子二人はどうみても外人だった。なんてこった。俺は英語なんかはなせねぇぞ。
まずは編成されたチームと交流を深めるようにと自由時間を貰い、俺達は休憩室にある丸いテーブルを囲んで座っていた。
他にも同じようにしているグループはあるけど、ここだけ話が弾まない。
隣にいるこの京極とかいう強面のせいにしとこう!
「……あーっ…。とりあえず自己紹介すっか」
「お、おう」
責任を心の中で押し付けた京極がまさかの第一声を発してくれた。なんか悪い京極。
「……ところで、一つ質問してもよろしいかしら?」
「おう、なんだ?えーっと…れ、れい……」
「レイティア=アディアス=イグレシアスですわ。レティとお呼びになって」
外人っつーのはなんて長い名前なんだ、と思いながらレティと呼べと名乗った金髪を眺めていた。
すると質問の内容が俺なのか、何か不服そうな顔をしてこっちの顔を見てくる。そしてさっきから一言も喋らないもう一人の女を交互に見た。
……まさか、こいつ。
「何故、このグループは女性がさんに」
「ざっけんなテッメェ!!!俺は女じゃねぇ!!!正真正銘の男だこの馬鹿外国人が!!」
「なっ、なんですって!?私を何と言ったかもう一度申してみなさいよ!!」
お互いに立ち上がりテーブルに片足を置いて睨み合う。
俺に関してはこいつが女じゃなかったら胸ぐら掴んでいた勢いだ。
「見た目で!!人の!性別を!!間違えんな!!馬鹿外国人が!!」
「わ、私を侮辱したわね!?そもそも貴方が髪が長い上お名前もジャパニーズネームでも女性についているようなものだからいけないのよ!!」
「んだとぉ!」
「っだぁぁぁ!!どっちもうっせぇから黙れ!!」
バッコーン!!となんとも痛々しい鈍い音が頭の衝撃と共にぐわんぐわんと鳴り響いた。
どうやら京極に俺と馬鹿女共々殴られたらしく、あっちも後頭部を押さえながらきょとんとした顔になっていた。
俺は確かに言い過ぎてと思うし、この強面の顔からしてこの制裁は間違ってないと思って渋々殴られた後頭部を押さえながら椅子に座り直した。が、レティの方は我に帰るとともにわなわなと震え始めた。
「な…な、なぐ…っ殴りましたわね…!?」
「あったりめぇだ!グループ結成初日から何喧嘩してんだふざけんな!!」
「わ、私を誰だと……イグレシアス家の令嬢ですのよ!?」
「はぁ!?知らねぇよそんなの!」
「し、知らないですって!?ロシアの、由緒正しき我がイグレシアス家を!?」
「あーもーうっせぇな。京極も知らねぇし俺も知らねぇんだからしょうがないだろ」
「おだまりなさいこの性別詐欺男が!」
「ああ!?ぶっ飛ばすぞこのクソ女!!」
「テメェ等学習しねぇのか!!」
今度は後頭部を掴まれてレティと無理矢理、勢いよく頭突きされる形となり、流石に痛すぎて額を押さえて机にうつ伏せになった。
くっそおお…!自分の石頭がこんなとこで損するとは……!!
レティも同じく相当痛かったようで、涙を目尻にためながら下を向いていた。
ざまあみろ!俺も痛いけど!!
「ったく…。おい、アンタも何か言っていいぞ」
京極が話を振ったもう一人の女は、びくりと肩を震わせて金魚みたいに口を開けたり閉じたり挙動不審な行動を取った。
「そうですわ。貴女もこの失礼な方々に何か文句の一つをお言いになって構わないのですわよ」
「……あ、……いや……」
失礼なのはお前だろ、と口に出したら絶対にさっきの二の舞になるから慌てて口を紡いだ俺を誰か誉めてほしい。
そんな誰にも届かないことを思いながら、まだ挙動不審な行動を取る女が何て言うか待ってみた。
「…す、マナイ…。私、マだ……ジャパニーズ、少し…」
「は?日本語喋れねぇのか?」
「………そう、すまナイ…。キョウゴ、ク…さん」
変なイントネーションに変な区切り。レティと違ってまさしく外国人の喋り方という、しどろもどろしている物だった。
とりあえず名前を再確認するため配られたチームのプロフィールを見てみた。
えーっと……名前はフィオナ、で。………ん?
「なあ、なんでイギリスからわざわざこっちに変えたんだ?」
名字がないのも気になったけど、一番目についたのは「イギリスの学院に半年間在籍していた」の文字だった。
自分なりにゆっくり喋ってみたら、案外伝わったのか顔を合わせてから一番の反応を見せた。
「イエス。…人、探してタイため。ジャパニーズの、生徒。肌、カッショク、サングラス、髪、薄いチャ色、タブン、ジャパニーズ違う。……知らない、か?」
特徴の単語だけハッキリと言うのに驚きながら、生憎知らないと首を横に振った。他の二人も同じように首を振ると、少し期待していたのか小さく「そう、か…」と呟いて分かりやすく肩を落とした。
その後軽く自己紹介を済ませて今後どうするか決めていたが、その短時間でレティと俺が何度も喧嘩を勃発させていた。
あーあ、なんか、面倒くせぇチームになっちまったなぁ。
彼らの始まり
(この後よくチーム変更の提案が上がったけど、やらなくてよかったなぁ。なんて)