人の姿と刀の生き方

「オマエの人っぽさは主の影響か?」


命じられた畑仕事の休憩中。

一緒に当番をしている同田貫がそんな話を振る。


「わりぃ。前の主、だったな」



他の刀剣男士にも、今の主にも言われたことがあった。

陸奥守は前の主の影響が強い。

刀の付喪神でありながら、人間のようだと。


「ひさに一緒じゃったからのぅ。けんど、ほがにわしは人の気があるんかの?」

「まぁ今は人っつーより農具だな。」

「それはおんしも同じじゃ」


俺は刀だ、と同田貫が溜息交じりに言う。

先に農具のようだと言ったのは同田貫だし、怒っているという風でもない。


「戦でも拳銃とか見てっとよ。お前本当に刀なのかよ」

「人の姿はしちゅうが、わしも刀ぜよ。龍馬の影響は……否定せん、時代もある」

「その龍馬っつー主はお前のこと大切にしてたのか?」

「勿論じゃ!確かに刀は時代遅れじゃったが、龍馬は」

「そうか、それは良かった」


言葉を遮るように、同田貫が良かったと口にした。

呆れるでもなく、苛立つわけでもなく。


「たぬき?」

「お前がそいつの意思を継ぎたいってんならそれも良いんじゃねえかと思ってな」


笑いながら、勢いよく背中を叩かれる。

休憩ばっかしてると怒られる、などと言いながら。


「おんしもまっこと人のようぜよ」

「そりゃどーも」

「なんじゃ、刀じゃなかったがか?」

「今くらいお前と同じでも良いと思ってな」

「変わっちゅうのう」


どうせやることは農具だという言葉に、顔を見合わせて笑う。

戦に出ればまた刀の仕事が待っているのだ。

せめて今、戦から離れている時は人の姿を謳歌するのも良い。

あの同田貫にさえそう思わせる力がある。

それに気づくこともなく、陸奥守は笑っていた。








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