秋は特に半透明にさせるのが上手だから、僕らはより感傷に浸りやすくなる。僕らは生きている限り患っていく生き物だから、感傷に揺蕩い、静かに笑い合う。
そうして冷たい風の中に少しの温かみを覚える。感傷が感性を育んでいくんだ。
僕は金曜日が好き。金曜日は特別なことはなくてもお気に入りだ。全ての風景が柔らかく感じるから好き。秋と冬はなによりそれを深く感じる。
秋は特に半透明にさせるのが上手だから、僕らは感傷に浸りやすくなる。僕らは生きている限り患っていく生き物だからね。



 とりとめの無い焦燥感や重みのある実態のない影という不安に押し潰されそうなそんな時、決まってそれらを全て一瞬にしてかっさらっていくなにかを欲するんだ。
より黒い鳥の影、羽ばたく音、それによって取り除かれる。
重みが消えて焦燥感の感覚もどういうものだったか忘れて影には柔らかい光が混じっている。
ここでようやく正常に戻れた気がして、嬉しくなる。
あぁ、湯が沸いている音がする。



 誰かが言った『人の思いは所詮、記憶の奴隷』だと。
ハサミで切ってバラバラにしよう。
バラバラにされたものに飼い慣らされた方がまだ自由に動ける気がする。
あぁ、でもどうだろう。わからないな。
ただ、『暗い部屋で一人、音楽を聴く。』とか、『起きた直後のぼんやり夢うつつ』のときが一番幸せなんだと思う。あの時が一番自由で一番半透明な存在になれている気がするんだ。
それになりたいんだと思う。

人格形成人格形成、殺せ殺せ殺せ。
人生は学びと人格殺戮(脆い)の繰り返しだ。
ただ、完璧になるわけではない。
人間は完璧に一番近くて一番遠い存在だ。
だから美しい、だから愚か、だから素晴らしい、だからきたない。
だから、欠陥品から抜け出せない。
欠陥品こそが完璧なのだろう。
欠陥品だから歪んでいるくらいがちょうどいい。

そうして生きながら、降り注ぐ季節に身を委ねるんだ。/欠けているウロボロス



 ある夏、影を見た。自分が欠けていた。
なんだか笑えてしまった。
顔が冷たかったけど。
なんでかな、なんで、いつから、こうなってしまったのかな。
なんて思いながら、項垂れ 揺れる。/春愁を引き摺るダチュラ



 黒が赤を吸収しきれなかったところを目の当たりにする。
僕は嬉しくてたまらなくなった。後、海のような安心を感じた。この感情も随分と久しい。
もっとだ、もっとしよう。もっともっともっと。
黒が赤に侵食される様をこの目でこの手で。
久々に感じた感情をまた手にいれるために。
もっとするんだ、もっともっともっともっと!



 ヤツは人間の身体を欲していた。
対人関係において、皮の剥がれたウサギのような人間の身体を欲していた。
生きることに向いていないとヤツは哀れに思った。だからその身体を我が物にしようとした。
蜜のような甘い言葉で唆して契約をすませる。
契約をしたその身体は、ヤツが飽きるまで使い倒した。使い倒す─つまりは身体の破壊。肉体の死である。
ヤツは人格の悪魔である。
ヤツは生まれるべきところに生まれる。



 ■■■■■■■のオブラートに包まれたい。
■■して曖昧に溶けていって、ふわふわ揺蕩う。柔らかな笑みが私の顔を形作る。
ナイフを隠し持ったピエロが風船を配りながら踊っている。その遊園地の中で感動し、笑う子供のような気持ち。夢心地のような優しさに身を任せる。
曖昧に溶けていったその中へ沈んでいく。
気付けば■■■■■■■のオブラートを求めている自分がいた。



 思わせ振りな優しい言葉は誰だって吐ける。
ドラッグと変りないものだ。
副作用は自己嫌悪と自傷行為。酷いときは自殺行為にまで及ぶ。



 吸い込んだ煙が身体の中で舞い踊る。そして核を置いて空になった煙が鼻または口から出て消えていく。
核は身体の中で花を咲かせる。
視界はスローに進み、色彩は激しく絡み合う。
花に惑わされて道に迷う。多幸感の中にほんの少し燻る不安を感じた。
極彩色の中で透明になれた気がして嬉しかった。



 感覚の■■を、感覚の■■■■■■を、私は身を委ねて私は半透明になってぼんやりしていたい。少しでいいから。■■は曖昧でいい。熱くて痛みを感じる雪の感触はなんだか悪くなかった。それを■■できてる。■■■■を■■したい。馬鹿だ。さらに馬鹿になりたいのかも。よくない駄目だね駄目だ駄目だ。■■■■を■■■■■■■。あれは■■■■■■気がする。私はなにも感じない毛布に被って少しだけ存在を消してみたい。大丈夫、私はまだ大丈夫。なにもわからなくなりたいけど。
今日もいつか見たあの夢をまた見るために眠る。



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