みじかいの | ナノ




不思議な『庭』のおはなし 01

※時間軸的には星籠から戻ったあたり…


目覚めたところはとても不思議なところだった。
果てのある壁が周りを遮り、自然にあふれ、俺と似たような境遇のヒトがいくらか居た。
そう、みんな誰かに関する記憶がないのだ。
覚えているのは名前とか、年齢とか、なんかありきたりな自分の情報のみ。
「なにをなしたかったのか、忘れるなんて、あるんだな…」
天高くそびえる樹木の中、皆で手分けして作った個室のベッドの上で俺はそう一人ごちた。
樹をくりぬいただけのその窓を覗くと、朝焼けが見えた。どうやら考え事をしているうちに寝ていたらしい。
「…起きるか」
くたびれたシャツを脱ぎ、ねむけ眼をこすって部屋から出た。

「お、津雲おはよう」
「はよーっす」
脱いだシャツを適当に洗濯するために外にでると、竜羅さんが朝から鍛錬をしていた。刀についた鈴がちりんちりん、と音を立てる。
「早起きですね」
「目が覚めるからな」
年よりではないからな!と慌てて訂正する竜羅さんに「そんなこと思いませんよ」と苦笑しながら、俺は軽く挨拶をして川にむかった。
「…ふう」
冷たい水を顔にかけ、ふるふると首を振る。幾分か脳も活動的になってきたな!と思いながらシャツを思い切り川でジャブジャブした。
乾かしている間、近くの木を相手に鍛錬をした。筋トレも毎日かかすことなくやっているが、ここに来てからなんだか体が鈍っている気がする。
「(俺はなにやってたんだろうな〜スーツ着てたし、なんか要人警護かな?)」
そんなことを考えながら鍛錬をしていると、俺の耳にちいさな草を踏みしめる音がした。
「…ミルか」
「はい」
透明になっているので姿は見えないが、今日は珍しく手に拠点の近くで生えている果物を持っていた(果物が浮いているのできっとそうだと思っただけだが)。
「どうしたんだ?」
「食べますか?」
果物がずいっと目の前に差し出される。
受け取ると、ミルメコレオの不思議なにおいが遠ざかって行った。
「…なんだったんだろ」
まあ汗も流したしいいか、と果物を齧った。

*

拠点での役割は特にない。
みんなやりたいことをやっているし、好きにしていいものとも俺も思っている。帰れる方法をみんな探してるだろうしな、と適当に想像しているし。
そうそう。この『庭』は不思議なことにどこかへ繋がる『扉』がわくのだ。
ただ、その扉の中での記憶は忘れてしまう。物や武器や食べ物は、残るらしいが。
乾いたシャツを持ち帰り、樹の重しで丹念に伸ばした。アイロン変わりだが、これはこれでマシである。
ちゃんとそれを着、誰かが持ち帰ったのであろうエプロンを上から着た。
役割はないが俺がやりたいことならある。
そう、料理だ!

「お前らー!飯だぞ!!」
コンコンと、紐を引っ張れば木の音色がなるものを引っ張り、声をあげた。
吹き抜けになっているここで大声で吠えると否が応でもみんな起きてくる。扉がいくつか開いてくるのを見届けていると、ぼふっと後ろから誰かがやってきた。
「お早う」
尻尾に顔をうずめながら、陸がそう言った。肩に乗っている、先日仲間になったテディベア(なんと動く!)もぺこりとお辞儀した。
「陸、それにクマもおはよ。飯できてるぞ」
「ごはん!」
あんまり表情は変わらないが、ぱっと明るい雰囲気をだすと『食堂』とかけられたところに駆けこんで行った。
「やれやれ」
「朽葉くんはよー!」
ぴょんっと現れたのはブルックリンだった。短い黒髪と蒼い瞳の快活そうなこの子は朝から元気いっぱいだった。ニコニコしている彼女につられて笑い返す。
「ブルックリンおはよ!」
「今日の朝ごはんはなあにー?」
「ああ。こんがり焼いたパンに目玉焼きを乗せたのと、そこらで採れた野草サラダと、デザートだな」
「やったー!先にいってるね!」
嬉しそうに両腕を上げ、くるくる回るとブルックリンも食堂へと入って行った。
「おはよ」
「おはよう」
「おはようございます!」
その次にやって来たのはおおかみくんとシドと能目ちゃんだった。まだうとうとしているおおかみくんを、シドと能目ちゃんが起こしたらしい、保護者っぽい二人に苦笑しつつ「おはよう」と言った。
「おおかみくんはまだ眠そうだな」
「ねむいのではないのです…布団がぼくを睡眠にいざなっているのです…」
「オイ、また寝ようとするな。メシだぞメシ」
「そうですよっ!ほらほら行きましょう!」
「ん〜…」
部屋に戻りそうになったおおかみくんをシドが片側から押さえ、もう片側に能目ちゃんが入るというコンビネーションで彼は食堂に連れて行かれた。
面白いなーと思っていると、「ごはん!!」と言いながら千歳が階段から転げ落ちてきた。
「……なんだその叫び声とやってることが一致しないのは」
「うー…朝食だと勇んで来たら階段を踏み外してしまいました」
「お、おう」
尻をさすっている彼を助け起こすと、千歳はえへへとはにかんだ。
「朽葉さん、おはようございます」
「津雲でいいって毎回いってるだろ…ったく。おはよ」
「はい!」
跳ねた前髪を直しながらそう言うと、俺の背中をおした。
「ほら、ごはんが冷めちゃいますからいきましょう!」
「おう!」

今日もどこかへ繋がる『扉』は現れるのだろうか。
そこの探索もたのしいから、元の世界に戻れる間ならいいかもな、と思う俺なのであった。


不思議な『庭』のおはなし
(津雲!ポチが!ポチがデザートに顔突っ込んでる!)
(ワァアアアアおおかみぃいいい!!)

先に言っておきます、口調間違ってたらすいませんんんn!!!
そして全員はつめれなかった…オラにもっと力を…(


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