六人はそれぞれ俺の姿を確かめると、顔を伏せたり窓の外を見たりと静寂を保ったままで好き勝手にくつろぎ始めた。
六人のなかに俺の知っている顔は無い。
俺は交友関係の広い方では無いし、そもそも学校の生徒数も多く、その上卒業生まで来ているというのだから知らない顔があっても不思議では無い。

……六人?
部長の話では、今日の集まりは七人に声をかけていると言うことだったが……
と言うことは、まだ一人来ていない人が居る……?

俺は考え事をしながらも空いている席に腰掛けた。木製で背もたれの着いた椅子だ。

誰が話すという事も無く、ただ無言の時間が過ぎていく。
進行役は俺なのだから何か話すべきなのかもしれないがそれを許さないような雰囲気が部屋中に満ちている。
来るはずの七人目も一向に来る気配は無い。
今回の参加者の手配には部長も協力していたらしいが一体どうなっているのだろう。
しかしこのまま黙って待っていてもどうしようも無い。

「……皆さんお忙しい中集まっていただいたと思います。これ以上お時間をいただくのもなんですし、そろそろ始めたいと思うのですが。」

俺が声をかけると、ソファに深く腰掛けた男性が目だけをちらりとこちらに向けて気怠そうに言った。

「七人集まるって話だったでしょ?七人目は君?…それとも君は、話を聞くために来るとかいう新聞部の子かな?」

…この人、何を考えているんだろう。
見ているようでさほど何も見ていないその目でみられるとなんだか背中がうすら寒くなる。

「後者ですね。俺の名前は氷室。氷室つららと言います。新聞部の三年生で副部長です。今日は部長…神田に言われて皆さんの会合にお邪魔させていただくことになりました。よろしくお願いいたします。」

挨拶は念入りにしておいて損はない…はずだ。
俺が自己紹介を終えると彼らは軽く相槌を打った。
それきり、何も話してはくれない。

「…………あの。このまま待っていても仕方がないですから。そろそろ始めましょう」

この会合を手短に終わらせて帰途につきたい俺はもう一度彼らに尋ねた。

「いいでしょう」

なめらかな背もたれのついた木製の椅子に腰かけている女性がそう答えると、他の人も頷いた。
彼らはいったいどんな怖い話をするつもりなのだろうか。
部屋の空気が重苦しく感じるのは、きっとこの部屋の窓が締め切られているせいだろう。

部屋の奥の方で切れかけの蛍光管がちらちらと点滅している。
そんな日常的なことですら今日は、何か得体のしれないものがいて、悪いことが起きるのを待っている証のように思えてくる。

重く息を吐く。
肩に見えない重圧を感じる、息を吸うのが億劫に感じるなんて初めてだ。
なぜこんな思いをしているのか、疑問ではあるが今はそれどころではない。
何事も始めなければ終わらないのだ。俺は口を開き、心なしか声を張り上げた。

「それでは、はじめましょう」

まだ見ぬ七人目を待たずして、集められた六人の学校であった怖い話が始まった。
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