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「能力者狩り、と言えば良いのでしょうか…。いや…違うな…」
「無差別なのか何なのかはわからぬがとりあえず生徒の能力を使えないようにするんだ。」
説明に戸惑う鴇君にかわり、孝之が言う。
でも
「は?なにそれどういうこと?」
意味がわからない
「腕を切られたり目を潰されたり…とまぁそれは酷い有様ならしいな。俺は見たことないが。」
孝之は平然としている。きっと彼は酷いとも惨いとも思っては居ないのだろう、この学園都市はそういうモノだ。
自分の身を守るのはあくまで自分であって、守りきれない弱者に与える慈悲や情けや憐憫は必要ない。この世界は所詮弱肉強食の理で回っているんだ。
そしてその理を利用しているのが私だ。
だから私もそんな彼を責める資格は持っていない。
「煽梨さん…」
鴇くんが私の顔を心配げに見る。
「どうしたの鴇くん」
「…いえ、大丈夫…ですよね、煽梨さんは。なんと言っても南区最強ですからねぇ」
「やめてよ恥ずかしいから」
優しい彼はどうやら私が能力者狩りとやらに遭うことを懸念してくれたようだ。
それにしても、その南区最強っていう呼び方はなんとかならないのかな、すっごく嫌だ、可愛くないから。
私がふくれっ面でいると鴇くんはそれに気付いて苦笑いする。
すみませんって謝って焼きたてのハニートーストの皿を差し出す彼は気配りができる男の子だ。
……それに比べて…
「貴様、恥じらいなんてもっていたのか」
このハニートーストをもぐもぐしながら喋ってくる女装野郎ときたら…
「ちょっと孝之、それは酷いよー。傷ついたー」
「知るか。というかそもそもそんな殺人犯ごときで今更騒いでどうするのだ。どうしようもないだろう。また昔の人面犬だとか人魚だとか十三日の金曜日のような根も葉もない噂話なのだから。」
孝之は尊大な態度でそう言い放つ。
私は彼のそんな態度がほんの少しだけどうらやましい。
傲慢ともとれるその態度は周囲を導く強さにあふれているから。
学園都市に少なからず存在している孝之のファンもまた、そのカリスマ性に惹き付けられて居るのだろうか。
私も自信が欲しい。
自信を持てる強さが。
失うことの無い強さが。
胸を張って誇れる、大切な現在を守るだけの強さが。
「そんなこと、ないかもよ?」
もしかしたら
「もしかしたら本当で、孝之も、孝之の周りの人も、勿論わたしも、殺されちゃうかもしれないよ」
「……」
そう、私も。
「ねえ、そうだったら、どうする?」
なんで私はこんなことを聞いたのだろう。
横に座ってる孝之は真剣な表情でしばらく考えた後、億劫そうに口を開いた。
「貴様がどうなろうと俺の知ったことではない、せいぜい白浜と仲良く暮らしているがいい」
「なによそれ。」
「俺に関わらないでくれ。ってことだ。」
そう言って、ぷいとそっぽを向く。
彼は本当に、強い。
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