意外性こそ人の魅力意外性こそ人の魅力

 
私のお約束のパターン。戦闘時にはテンションをブチ上げて後先考えず突撃して敵を八つ裂き、蹂躙、撃滅。そのうちにヘマして大怪我して帰ってくる。今日もまさにその流れになってしまって、いま私は布団の上で身動き取れずに寝転がってる。

「名前は戦闘の後はいつも血塗れでござるな」

「頭に血が上ると突っ走っちゃっうのダメだよね」

「よくない癖でござるよ」

怪我して動けなくなってた私を母艦まで引きずってきてくれた河上は、呆れたように私を見下ろしている。手足のあちこち斬られて痛いけど、脇腹にどデカい穴が空いているのが一番きつい。

「よくないよね。自覚してる。あとアレが二日目なのもあるのかなー」

「……」

「黙るのやめてもらっていいですかね!?」

「どうりで揺らいでいたわけだ」

体調が優れなかったと伝えたかったけどちょっと直接的過ぎたな。ツッコミを入れてくれたら恥ずかしくなかったのに河上はサラリと受け流して無視しながら、少しだけグラサンを持ち上げた。私に揺れるだけの乳はないんだけどなあ。言ってて悲しくなるな、コレ。

「揺らいだ? 何が?」

「魂の鼓動リズム

「へえー。たまズムって体調の影響受けるんだ」

「その略し方やめるでござるよ」

穏やかな曲の中に僅かな変調があったのに気がついていながら看過した。河上はまずいことをした、と言わんばかりの顔つきになった。と言ってもあまり表情に変化はないんだけど。

「なんで河上が責任感じるの。これは私の過失ていうかヘマだよね」

「晋助に『お前がきちんと首輪してねえで誰がやる。ちゃんと躾けておけ』と言われたでござるよ」

戦闘の度に箍が外れて、敵を大量に屠る代償として私自身が大怪我を負っていてはプラマイゼロだし寧ろマイナス。だから高杉は河上に「首輪つけとけよ」と指示したわけだ。

「あー……敵に突進した駄犬でゴメンナサイ」

「とはいえ命に別状なくよかった」

「私は頑丈さが取り柄だから」

「血の気が多くて結構でござる。が、体が資本だ。ゆっくり休むといい」

「ん、ありがと河上」

「では養生するでござるよ、名前」

頭に血が昇って後先考えず突撃する悪癖の八割は私の性質、残り二割はこうして河上に構ってもらえるのを期待してるのもある。これは口が裂けても言えないな。

傷が深すぎて二日ほど寝たきりを余儀なくされた私は心底暇だった。タバコは没収され槍も武器庫に仕舞われて、手持ち無沙汰にもほどがある。

それを見兼ねて武市のクソ野郎が持ってきたのはブラウン管テレビだった。絶対嫌がらせだよな!?「もうとっくの昔に映らなくなってんだよ!」と腹の傷が半分開くほど大暴れして液晶テレビを持って来させた。

寝転がりながらテレビを見てたら、つい先日発売になったばかりの寺門通のアルバムのCMが流れた。お前の母ちゃん(自主規制)だ、だの、チョメ公なんざクソくらえとか、収録されている曲の歌詞はどれもかなり尖っている。

すげえなー放送禁止用語叫んで歌ってるの。もはやイロモノアイドルじゃん。半笑いしていると画面の隅っこの方に「作曲:つんぽ」という文字が見えた。

「……あれ、つんぽって河上の音楽プロデューサー名義だよな?」

すげえなー河上。アイドルに曲提供してんのか。この曲、河上が作ったのかあ……そうか……。

「はああ!? 河上って作る曲はこんな感じなの!? マジで!?」

普段から魂の鼓動がどうとか言うからもっとこう、スタイリッシュなやつを作ってるんだと思ってた! いや悪く言うつもりはないし私に音楽のいろははわかりませんけども! でもこれはアレではないですかね! びっくりしすぎてまた腹の傷が開いた。超痛かった。


20230504

音楽性は見た目で判断できない。当たり前体操。




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