しかと見ろ
※彼女夢主


バスケ部って近寄りがたい。練習中とか下手に声かけられないし、練習終わってもみんな居残りでずっと練習してるから本当に近づけない。というか名前の趣味は渋すぎる。運動部でかっこいい奴は他にもたくさんいるのにどうしてそこで牧なのか。帝王だしデカいし色黒いし近寄りがたいし老けてるし何よりストイック過ぎて怖い。なんで普通に話せるのか不思議で仕方ない。ていうか本当に仲がいいの?

「って言われたんだけど失礼だよね」

「俺に対して失礼とは思わないのか」

「私の意見じゃないもの」

もちろんその場で友人に反論した。プレイ中は熱が入ってしまって鬼気迫るのは当たり前だし海南大附属高校のバスケ部はインターハイ常連校で練習は厳しいのは周知の事実だから遅くまで練習しているのも当たり前のことだ、と。それに紳一は見た目ほど怖くないし寧ろ温和な方だとも弁明した。あまり信じてもらえなかったが。

「デカくて色黒でストイック過ぎて老け気味で怖くて近寄りがたい。それを除けば普通のバスケ部の主将よね、紳一は」

「フォローになってねえ」

顔にまつわるをネタやあだ名を言われると心底ダメージを食らうらしい。意外だなあ、と本人には申し訳ないけどその弱点を知ることが出来て少しばかりの優越感を得ている。

「紳一にあだ名をつけたと言えばショーホクの赤い髪の一年生か」

「名前、なんで知ってる」

「清田くんに教えて貰った」

信長の奴、と牧は恨めしそうに呟いた。ごめん、清田くん。名前言っちゃった。許して。と、前方に友人たちが歩いている。要約すると「牧は老けてる」と言い切った彼女らの後ろ姿を見ているとじわじわと湧き上がるものがあった。見せつけてやろうかな、という出来心だった。

「ちょっと腕貸して」

「は?」

言うが早いか、私は紳一と腕を組んでそのまま歩を進めた。おい、何してんだ。怪訝そうな声には耳も貸さずに猛然と直進した。おい止まれ。この体格差なら止められるのに、無理強いしないそういうところ好きだよ。


確と見ろ


翌日、友人達に「仲いいところが相違相愛だね」と言わしめた。大成功だったが、紳一にはねちっこく説教っぽいものを食らった。体力エグすぎて死ぬかと思った。


初稿:20140513
改稿:20220227
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