前言撤回、不道徳
※健全性行為の続き
こうなったきっかけというか、原因はマリヤさんにある。
数ヶ月前、いつものように悪魔を片付けたあと彼女の家に行く途中で貧血を起こして歩けなくなってしまった。力なく地面に座り込んで身動きの取れずに俯く横顔は真っ青だった。冷や汗もかいて手も震えて座ってるのがやっとという状態だった。
「えへ…こんなこともあるんだね…」
「他人事みたい言ってないでしっかりして。大丈夫?」
「滅多にならないから…ごめん…」
「立てる?」
「んー、もうちょいしたら立てそう」
真っ青な顔で力なく笑うマリヤさんが立てるようになったのはそれから30分もあと。まだ足取りはかなり危なかったから仕方なく肩を貸してあげてゆっくり歩いてようやく彼女の家にたどり着いた。体力が残っていないマリヤさんを座らせて靴を脱がせているといきなりオレに寄り掛かって、ぼんやりとした生温い声で言った。
「吉田、いい匂いがする…」
多分、密着させて歩いてたのがいけなかった。紅潮した顔で微笑むマリヤさんはオレを引き倒して、ごめん我慢できないと謝っていた。さっきまで貧血で真っ青な顔してた人とは思えないほど血色が良かったし、何より欲情してることに理解が追いつかなかった。
馬乗りになって捲れたワンピースから下着が見えそうだった。でもそんなことお構いなしでマリヤさんは足を絡ませながら体を密着させて服の上から弄った。オレの首元に顔を近づけて足の間を腿に擦り付けてばかりいる。思ったより事が先に進まないから彼女の背中から腰にかけて指先で撫でたらあっさり体を強張らせてイッてしまった。
今思えば玄関先でなんて破廉恥なことをしてたんだろうと冷静に考えられるけど、あの時はびっくりしたのと勢いに飲まれてされるがままだった。その時、肉体的関係を持ったのかと問われれば否だ。マリヤさんがオレの匂いと体の一部を使って果てただけだから。
そんなことがあったからあとはもうなし崩し。デビルハンターの仕事が終わる度に互いの体をいじり合っては欲を満たすふしだらなことをしている。
「あ、あ…っだめ…」
プラトニックだなんだと言い訳をしてたけど結局腰を抜かしてしまったマリヤさんはオレの足元で体を震わせて余韻に浸っている。
「はあ、またイっちゃった」
「マリヤさんばっかずるいな、いい思いして」
「そうだね」
蕩けた顔でオレを見上げて、ベルトに手を伸ばして下腹部の熱が集まり始めた辺りを布越しに摩ってクスクスと笑う。
「ここ最近はいつもわたしばっかりだったもんね」
赤らんだ頬と潤んだ目元。欲情してるのがよくわかる声でごめんね、と舌舐めずりして囁いた。
「いっぱいしよっか」
*
椅子に座らせて中途半端にズボンを脱がせて、吉田の体の中心に顔を寄せる。好きな匂いが濃くなって胸が高鳴った。
「あんまり嗅がないでよ」
「やだ。わたしはこれ目当てだよ?」
「はあー…」
どういうわけか、わたしは吉田の体臭に酷く反応を示す。優しいというか柔らかいというか、誘うように甘ったるかったりするじゃないけどそれでいて特徴的で。目隠しして街中を歩いてすれ違ってもすぐに分かる、そんな匂い。
全部偶然だった。貧血になったことも肩を借りて歩いて帰ったことも、吉田が自分の体が求める匂いをまとっていたことも、それで家に上がった途端に押し倒して吉田の体を勝手に借りてオナニーしたことも。
全部ただの成り行き。
この匂いだ、って直感的に体が動いた。少し堅苦しく言うなら細胞が叫んでいる、とでもいうんだろう。細胞が、皮膚が、感覚が、体の全部が吉田を欲してまるでケダモノみたいに昂っていた。目の前にいるうら若き高校生に欲情するなんて。道徳的な理性が働くのはほんの一瞬だった。暴走する肉欲にそんな些細ものは全く問題にならない。
薄い布の向こうで徐々に存在感を増していく中心部分を鼻先で擦ると、頭の上から微かに上擦った吐息が聞こえた。
「ふふふ。くすぐったい?」
「ちょっとね…」
「こうやるの好きなんだよね…」
鼻先と唇をほんのちょっと当てて滑らせるだけの触れ合い。ぐにっと唇を押し当てて食むと、ほどよく固さを増していく。一枚向こう側にあるそれを触るだけ。撫でるだけで少し固くなったり形が変わるのが愛おしい。きちんと返ってくる反応が嬉しくて何度も繰り返す。はあ、可愛い。ずっと触って嗅いでいたいくらい。
「そろそろ、きついんだけど あ…、っ…」
「ん、大きくなってるもんね」
パンツのゴムを口で引っ張って脱がそうとすると吉田が「それ止めてよ」と文句を言う。何回も同じことの繰り返しで、ゴムを咥える度に顎がそれに当たってむず痒いみたい。手を使ったらあっという間に脱がせられちゃうからつまらないんだよねえ。焦らして焦らして、苛つくほどにノロノロと下ろしてようやく生のそれに対面した。窮屈そうに収まってたそれは勢いよく飛び出して頬っぺたに湿った感覚と一緒に当たった。
「おっきいねえ…ふふ。美味しそう」
「はしたないなあ」
「本当のこと言っただけじゃない」
ひたすらしゃぶるのが好きなのは吉田がよく知ってる。皮の皺の隙間も筋の裏っ側も、隈なく舌と唇で撫で回す。吉田の所作が逐一わたしのお腹に疼きを生んでゾクゾクする。足の間のずっと奥の方、熱がこもり始めてわたしもどこか心地良い。どこも触れてないのに勝手に出来上がってしまうのは恥ずかしいけど吉田の匂いが堪らない証拠。
「マリヤさんさぁ、顎疲れるでしょ…、飽きない?」
「んん、ずっと舐めてられる」
「…っ、 うっ…」
吉田のなら何時間でもね。優しく歯を立てると吉田の体が強張った。腿の筋肉が浮いて、腹筋も影ができてる。綺麗な体を口だけで蹂躙してやってる自分の優位性にも興奮する。話していても仕事の合間もクールな表情を崩さない。それが切羽詰まった表情を見せる。しかも今それを見てるのはわたしだけ。
そんなの最高に楽しいに決まってるじゃない。手を掴んでくる吉田の指に絡めて、口を窄めて吸い上げる。恋人繋ぎなんて青春ぽくて目眩がする。
「は、あ …っ ぐ…」
「ん、んぅ…」
ずっと強い力で手が握られてすぐ、舌の上にぬるっとしたものが乗っかった。吉田を盗み見ると目をきつく閉じて眉を顰めて、年相応の可愛らしい表情で喘いでいた名残があった。すごく意地悪したくなる顔してる。口の中に出る青臭く熱い粘液を舌で弄んでから竿の中の残りも吸い出して飲み込んだ。
*
マリヤさんの舌技は容赦ない。手は使わないで搾り取られるからうっかり咥えさせたままにするとえらいことになる。放って置いたら一時間くらいは続けて離さない。もういい、と引き抜かない限りずっとこのまま。吐き出したそれを飲んで口の端についた汚れを舐め取ってマリヤさんはご満悦そうに目を細めた。
「最近やってない?」
「まぁね」
「ふーん」
引く手数多の吉田も気が乗らない時あるんだねと馬乗りになりながら陰部をまた腿に擦り付けてる。
「それなりに経験積んで面倒になった?こういうの」
そういうマリヤさんはどうなの。聞こうとしたけど野暮だから止めた。経験した人数が多いとか少ないとか最後はいつだとか聞いても別に意味はないし。触れば分かる。
「ならしないけどね」
「ひゃ、」
ソファにマリヤさんをうつ伏せに転がしてショーツの隙間から指を差し込むと、なんの抵抗もなかった。あっさり滑り込んだ先はドロドロに溶けて解れて熱い。中で指を曲げると大袈裟にマリヤさんの体がしなった。腰が浮いて、指を咥え込むそこも収縮して蠢いてる。すぐイクなあ…。
「よしだあ…だめ、そこ…」
「好き?」
「好き……ひぃっ」
「素直だね」
こういう時、女の人って大抵好きじゃないって否定するけどさ。好きならちゃんと触って欲しいだろうなあ。指をもう一本入れて掻き回すと驚いて首を横に振った。
「あ、やっぱダメっ」
「はは。無理無理。ここでしょ、ほら」
あっという間に指は濡れて出入りする度に音が鳴る。好きと言ったところを指の腹で撫で回すと面白いくらいに体が跳ねて締まると同時に水が滴った。さっきのお返し。しつこく撫でると押し殺せてない悲鳴を上げて、マリヤさんのそこが震えて掌に人肌のものが噴き出す。あーあ、また吹いてる。
「ソファ水浸しになっちゃうよ」
「ま、待って無理…もう三回目…」
「いっぱいしようって言ったのマリヤさんだよ?」
「…そうだけど…、吉田、手加減なしじゃん…っ」
堪え性がない様子を見ればあと二回は堅いな。避妊具をつけてる間、脱いだ上着に顔を擦り付けて匂いを嗅いでる。…ほんとに好きだね、オレの匂い。
向き合うとマリヤさんは勝手に足を開いた。初めてなのに意思疎通できてるのが不思議だよなあ。みっともないくらい広げた足の間に入っていくのをうっとりと眺めている。自分でそこを広げてることはちっとも恥ずかしくないようで、中を埋め尽くされる感覚に口角が緩んでいく。
「ガン見するんだね…」
「ん…入ってるところ見るの好きだし…あ、全部入った」
「こうした方が見えるよ」
「ん、わ」
鼻がくっつきそうな距離。視線を落とせば隙間なく繋がってるのがよく見えるけど、今はそれどころじゃないみたい。
「や、だめ 近い…っ」
「何がだめ?」
「においが」
いい意味のだめってことはよく分かってる。これ以上間近で嗅いだらどうかなっちゃうと、逃げようとしたマリヤさんの腰を抱き込んで頭を首筋に密着させた。目に見えて様子がおかしくなったマリヤさんはオレにしがみ付いて勝手に腰振ってイって喘いでる。甘ったるい声でオレの名前を呼んで泣きながら動いて、また温かい水が滴っていく。
「よしだ、あ…っ」
「は、 マリヤさんエロ…」
匂いに急き立てられて、痴態に煽られて必死に粘膜を擦り合わせてる。ゆさゆさと二人して夢中で体を揺らして、欲するままに貪った。
20200810