ただひたすらに絢爛
※Fate/Zero
※綺礼妹

くりくりとした瞳にぴんと立った耳、掌にふざけてかじりついてくるその仕草がとても愛らしい。数日前から教会の近くをうろついている二匹の子猫にじゃれつかれた名前はその無警戒さに思わず頬を緩めた。足に顔を擦り付けてくるので立ち止まり、その場にしゃがみ込んで頭を撫でてやる。

「お前たち、どこから来たの」

「にゃあ」

ビー玉のような大きな目で名前を見上げながら子猫はまるで返事をするかのように鳴く。二匹は尻尾を揺らしながら互いに見合っていたかと思うと、にゃっと甲高い声で鳴き、勢い良く飛びついて名前の足の横を転げながら走り回る。その無邪気な様子を半ば呆けながら眺めていると、すぐ背後から聞きなれた不遜な声色の男の呟きが聞こえてきた。

「ほう、また来たか」

「あら、王様。“また来た”って…」

一体どういうことですか?という声に重なる形で、さっきまでじゃれていた子猫が物凄い勢いでギルガメッシュの元に突進してきたのだ。そして喉を鳴らし、心地良さそうに目を閉じて名前の時と同様に顔を足に擦り付けている。が、度合いが全く違った。顔だけでなく体全体をギルガメッシュの足元に摺り寄せているのである。さらながらマタタビを与えられて陶酔しているかのようだ。

「凄い甘えっぷりですね」

「初めのうちは煩わしいと思ったが、こうも懐かれると邪険に出来まいて」

そう言うとギルガメッシュは足元で寛ぐ子猫の片方―明るい焦げちゃ色のキジトラ―を片手でひょいと持ち上げて耳の後ろをマッサージするように撫でている。相変わらず子猫は心地良さげに喉をごろごろを鳴らす。

―この方は何をしても絵になる。

ただ子猫を抱き上げるというその一連の動作でさえ優美に見える。紅い瞳を細めながら子猫を愛撫するその様はどこか色気があった。“人類最古の英雄”たる由縁だろうか。先ほどまで無邪気に遊びまわっていた子猫もその雰囲気を纏い、何やら艶やかな佇まいになっているように感じる。

「王様は何をしていても煌びやかに見えます」

身につけるもの身の回りにあるものが上等であるのは勿論、所有される全てのものが彼の雰囲気に侵食されてまばゆいばかりの独特の輝きを放つ。例えそれが生き物であっても。例外などないかのように、彼の周りにあるものは全て。

「当たり前であろう、俺を誰だと思っている?」

「言うまでもありませんでしょう王様。英雄王ギルガメッシュ。貴方は人類最古の英雄です」

その不敵な笑みも、不遜な態度も高慢な立ち振る舞いも、鼻につくことはない。全てが彼の存在感を引き立たせる。髪の色も瞳の色も、指先から足先までの一挙手一投足全てがただ煌いて目を奪われる。名前は、英雄王を敬虔な眼差しでもって見つめていた。


過去夢(2012頃)
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