肉欲の赤、制欲の赤
※Fate/Zero
※綺礼妹

燭架の上で仄かに点されたその灯りだけが部屋の中を照らす。仄暗いが目が慣れてしまえば何の事はない。明るすぎず暗すぎず塩梅が良い。その部屋の中で、ギルガメッシュは長椅子に横たわった己の上に膝立ちにさせ名前に服を脱ぐように命じた。

「何処も彼処も傷だらけではないか」

ギルガメッシュは霞のかかったような薄闇の中で、名前の体を弄りながら呟いた。白い肌のところどころに古傷があり、肩から始まり腕や背中、太ももにまで至る。脇腹に至っては何針も縫った痕まであるのだ。

「この傷は誉れのようなもの。代行者として堕落していった多くの魔術師を仕留めた証だと私は考えております」

「ほう」

「ですけど…やはり見苦しいでしょうか、王様」

「見苦しいと言えばそれまでだが、お前がそのように考えているのならば話は違って来よう。誉れとするならば見方によっては装いに見えなくもない」

「王様の目に障らないのでしたら、安心です」

にこりと清らかに笑う名前を下から見上げるギルガメッシュは腰骨に手を這わせた。体温を確かめるようにじっとりと、とうの昔に閉じた傷跡を開くようにねっとりと筋張った指先がなぞる。

「ここの傷跡はいつ頃のものだ」

「確か、二年ほど前でございます」

余りにも魔術師が必死になって逃げ回って面白いものでしたからじっくり相手をしていた時にぽかをしまして、と一糸まとわぬ名前は記憶を辿るように時折ええと、と思案しながら言う。ギルガメッシュはその答えに耳を貸しつつも空いた方の手で、無感情に名前の中心部に触れる。それとは別に、今度は太ももの傷跡を擦る。

「では、これは」

「代行者となって、初めて魔術師を 殺した時です……。緊張と、興奮で、加減が 分からず相手の  頭を、木っ端微塵に してしまいました…んっ」

蠢く指の感触に名前は声をつまらせ腰を小さく揺らめかせながらも律儀に返答する。紅玉の瞳を色欲の色を滾らせながら一層名前を責め立てる。

「あの、王様。一体どうして、こんな事をお聞きに なるのです?」

「何、ちょっとした興味でな」

「んぅっ…」

体の奥の方を触られて名前は思わず上半身をかくん、と折ってギルガメッシュの上にしな垂れかかる。快感に従順な様子を見て満足げにギルガメッシュは微笑む。いや、微笑むというには、淫靡な雰囲気の漂うその表情は似つかわしくない。

「名前よ、お前は自分の血の色にも興奮するのか?」

「ん、いえ…あん…っ、他人のそれにしか、昂ぶりを感じたことは 、はぅ…」

王様の言う通りならば月の物の度に興奮していることになりますね、と名前は喘ぎ声の合間合間に呟いた。

「寧ろ、自分の血を見ると ん、昂ぶる所か醒めてしまうのです… ひ、忌々しくも感じます…この体が、女のこの体が…」

「忌々しいと思っているその体でどれほどの快感を貪っている?」

「あっ…!」

突如押し入って来た大きな熱に名前は体を強張らせて、一際艶めいた声で啼く。何の前触れもなく入り込んできた、ギルガメッシュのそれがぬるりと胎内で動くのだ。しっかりと奥まで入り込んだままの状態で、名前の背中は長椅子に押し付けられる。さっきとは体勢が真逆になっており、今度はギルガメッシュが名前を見下ろしている。

「その体に生まれた事を忌々しく感じるのであれば、名前、お前は本当の愉悦というものを知らぬ。まだまだ己の魂のかたちを分かっていない」

「ひ、ぁ  王、様…っ」

「先ずは手始めにこの体に教え込んでやろう。忌々しさなど露と消えようぞ」

ずぷり、と穿たれる快感に名前はあられもない声をあげてギルガメッシュにしがみ付いた。


過去夢(2012頃)
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