食っては食われ
真っ暗。うすぼんやりと天井が見えるけど、壁との境目なんかどこだかわからない。
「あれェ、余裕あるじゃん」
「っあ」
ずっぽりと入り込んでる金田はだいぶ強引に名前を突き上げてきた。冷えたシーツが火照る体には心地良い。ソコが異様に熱くてそこに楔を打ち込んでる張本人を見上げる。でも、部屋が真っ暗な所為で体の輪郭が見えるだけだ。
「何考えてたんだよ?彼氏とか?」
「っ、ふふ 私、彼氏いないし」
ゆるゆると際どいところを擦られながら名前は応えた。下腹部の圧迫感が半端ない。金田が動く度に内臓も一緒に動かされているような錯覚を覚える。
「ちょっと、苦しい…」
「ェエ?いい、の間違いじゃないの?」
「あんっ」
不意に突かれて反射で腰がきゅっ、と反り返った。金田は名前の膝を掴んで股を割り更に奥に奥にと入ってくる。もう目一杯だというのに、無理矢理にも程がある。名前がもう無理と言うのと金田の腰が動くのは同時で、甲高い声が部屋に響いた。
「苦しそうには、見えないけど」
「加減、してェっ」
「い・や・だ」
ニッとサディスティックな笑みを浮かべた金田はトドメだ、と言わんばかりに突き上げた。大きな熱の塊が腹の中で暴れて名前は悲鳴を上げた。四肢が電気で打たれたみたいに反応して勝手に引き攣る。胸の谷間を汗が雫となって流れていくのにですら反応してしまう。反り返っている名前の腰を掴んだ金田は声を殺して耳元で囁く。が、快感に溺れる名前の耳は金田の声を拾うことはなかった。
「んっな にっ」
「聞こえてないなら良いや」
好き勝手にかき回されて名前は訳がわからなくなった。頬に落ちた金田の汗、尻を伝う体液、シーツを握り締める自分自身の手。感覚がいつもの何倍にも研ぎ澄まされて、与えられる快感に過敏に反応している所為もあって、名前は呆気なく気を遣ってしまった。
収縮するのにつられて金田は声にならない声を口から漏らして動きを止めた。圧し掛かってくる金田の体の隙間から天井を見上げる。暗くて静かな部屋の中には荒い吐息しか聞こえない。必死に呼吸をする金田の背中に手を回し汗ばんだ背中をペタペタと触る。綺麗な背筋のライン、肩甲骨周りの筋肉の程よい硬さ。この体に抱かれていたのかと思うとまた反応してしまう。
「はァー…熱ぃ…」
滴る汗を手の甲で拭うと、ソレをさっきまでの余韻もへったくれもないぞんざいな扱いで引っこ抜いた。後を追う様にしこたま吐き出された白いものが溢れ出した。
「ゴムくらいしてよ…」
「んだよ、クスリ飲んでんならいいだろォ」
「気分の問題よ…あーあー…ベトベトじゃない」
処理をさっさと進める金田を横目にティッシュで白濁を拭い取る。べっとりと糸を引くそれ。若さ故なのか量も凄い。金田に背を向けて黙々と拭い続けていると、耳元で彼が囁いた。
「なあ、もう一回」
「え?」
「こっちに尻向けるのが悪い」
いやらしい手付きで腰から下を撫で回す金田を横目で見て、今度はこっちが啼かしてやる、と用済みになったティッシュをゴミ箱に放り投げた。
食っては食われ
過去夢(2012頃