鉄壁のガードを崩せ
※風間の幼馴染夢主
※みんな同じ大学通い


つまらない講義なのに熱心にメモを取っているからつい興味本位で「退屈じゃないですか、この講義」と聞いてしまった。一瞬キョトンとしてこちらを見たあと「先生の喋り方は抑揚ないけど内容は面白いと思います。私は好きです」と彼女は答えた。

まあ熱心なもんだと感心していた。「去年、一番受けたかったけど他の講義との折り合いが悪く取れなかったんです」と言いまた黙々とメモを取り始めた。驚いたことに随分小柄なその女性は自分より一個年上だった。真面目な横顔を見ていたら、講義が終わってしまった。

「だめもとで聞きたいことがあるんだけど」

水曜二限目の基礎科目の講義を受けている、肩に着くくらいの黒髪で風間さんと同じくらいの身長の女の人が同学年にいないか、と風間さんに聞いてみた。

「名前が受けていたような気がする」

「誰?」

「名前。苗字名前」

「風間さん知り合い?」

「知り合いというか幼馴染だ」

風間さんが敵に見えた。



「どうして私の名前知ってるの」

後日、教室の端っこにいる名前さんに「隣空いてますか」、と声をかけた時のことだった。自分の名前を呼ばれてびっくりしたらしく少し目を白黒させて俺を見ていた。

「風間さんから聞きました」

「蒼也と知り合いだったの?」

「知り合いというか」

ランク戦でめっちゃぶつかってるし。知り合いのレベルは通り越している気がする。知人とか友人という言葉がしっくり来ない。うーん、と暫しの間悩んだあと、俺の零した単語に名前さんは微かに眉を顰めた。

「…戦友…?」

「……へえ、そう…?」

俺を警戒しているのは火を見るより明らかだった。



その後、数度に渡り接触を試みたものの俺の姿を見かけるとそそくさと立ち去ったり距離を置こうとしたり、忙しそうに挨拶を交わすだけに留まってしまった。これは馬鹿でもわかる。避けられている。

「名前さんが心を開いてくれない」

「知り合って間もない人間に直ぐに心を開くやつがいるか」

「俺はいつでも心を開いてるのに」

アルコールを摂取しながらぼやくのは気になって仕方ない女性のことだった。素面でも言うときは言うけど。ああ、いいなあ風間さんは名前さんと小さい頃から面識があったんだよなあ。面識じゃないんだろうな。家族ぐるみで付き合ってたりしてそう。いいなあ、小さい名前さん絶対可愛かったんだろうな。いいなあ。

「風間さん、名前さんの小さいときのこととか教えて」

「プライバシーの問題がある」

「そんなこと言わずに」

「昔の話を他人にされて喜ぶ奴がいると思うか」

「思わないけど知りたい」

「子供か」

言いたいことは分かりますけど俺は子供じゃないです、もう酒も飲める。…つーか風間さんの家に写真の一枚や二枚はありそうだよな。

「写真、ありますよね」

「おい太刀川、変なこと考えるなよ」

やだー。名前さんといい風間さんといいなんでこんなにガード固いのー。ちょっと話を聞かせてくれるだけで、写真を見せてくれるだけで俺の心は一時的ではあるけれど満たされるのに!缶チューハイを手に床をゴロゴロと転げ回る。「面倒な奴に好かれたな、名前」という風間さんの言葉が聞こえたが、すっかり酔ってしまって意味を理解出来るほど思考が回らない。そんな状態でもどうにか彼女と、名前さんと関係を深める方法を模索していた。


20140516
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