エピローグ
※腹黒彼女

ラッピングされた紙をバリバリと乱暴に破いてやった。ご丁寧に巻かれたリボンももれなく床に投げ捨てる。余計なものを全部除外した末、手の中に残ったのは皮製の黒いブックカバーだった。

「へえ」

アイツのことだ。嫌がらせの一つでもしてくるかと思ったが、案外まともなものを贈ってきたもんだ。まあしてこようものなら悠の誕生日にも同じようにしてやるだけだけどな。

「………」

悠はどんな顔をして聞いて回ったのか。同情するわけじゃねえがあの面子にいちいち聞いていたとは、骨が折れることをしたもんだと思う。別に同情するわけじゃねえが。悠は何を思ってこれを買ったのか。シンプルであることを突き詰めたそれは表も裏もどこまでも黒かった。ワンポイント、飾りもない。ぼんやりとブックカバーを眺めていると、マナーモードにしたままの携帯が震える。着信の相手は原だった。

『あ、花宮。掛川ちゃんから何貰ったの?』

「さあな」

『あららー、つれないお返事ですこと』

「で、何の用だ」

『飯、食いに行こー』

「藪から棒だな」

『もう花宮の家の下で待機しちゃってるから、早く早く』

「勝手になにしてやがる」

『奢りますよ監督、主に山崎が』

俺かよ!と電話の向こうでぎゃんぎゃん喚く声がしたが原が、何食いたい?花宮の好きなもんにしようって思うけど俺らそんなに金ないから財布に優しいところで宜しく!と捲くし立てるもんだからほとんど聞こえなかった。とりあえず、通話をぶち切って上着を手に取った。


Lots of love for your birthday.
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