イイハナミヤ04
喘ぎながら悠は言う。

「よく飽きもせずできるわね」

首を絞められて意識朦朧をしていた悠が恍惚とした表情を浮かべつつも、反抗的な熱を瞳に宿したままこちらを見上げている。咳き込みながらも爛々と光っている。

「げほ…っ」

細く柔らかい体を組み敷いて穿つ。生殖行為ではあるが、子孫を残すことよりも屈服させることの方が重要であり、意義の大半を占める。

「折れるまで、だ」

「折れるまで?」

お前が折れるまで。反抗的な態度をとるのを止めるまで。従順になりさがるまで。飽きるなんてことはない。お前はいつか絶対俺に屈して折れる。髪を掴んで耳元でそう囁いてやると悠は慈しみに似たような笑みを浮かべつつも冷え切った燃え上がるような瞳でこちらを睨む。そして嗤う。

「それ、出来ると思ってんの?」

悠は最中に発するのは到底思えないような低い声色で唸るように言った。

「私が?あんた如きに折られると」

恨めしげに目を細めてこちらを凝視するその目には反抗心が剥き出しになっている。

「折られてやらない。あんたが諦めるまで絶対に」

「生憎だな。反発されたらされた分だけ徹底的にやりたくなるんだよ」

「―っ!」

ぬかるむ下腹部を掻き回せばあっという間に反抗的な態度は色香に飲み込まれて見る影もなくなる。打てば鳴るというのに、ある程度は掌の上で転がせているというのに、まだまだ折れるには至らない。いや、折れる折れないの問題ではないのは薄々勘付いている。

「折れようが、折れまいが、そんなことはどうでもいいんだよ、悠」

飽きもせず、とは確かに思う。よくもこんなにも長い期間同じことを延々と繰り返して来たと。吹っ掛けた喧嘩を律儀に買い、勝てもしない癖に突っかかってくる。結果はいつもと同じである予想はつくのにそれでも尚噛みつく。くだらねえとどこかで決めつけても、手を出してしまう。

「どっちにしろお前が噛みついてくる限りは、毎回屈服させるだけだ。力づくでな」

いたちごっこのように埒が明かない不毛なやりとりであっても、同じようにねじ伏せてやる。それが嫌なら頭使って俺を楽しませてみろ。悠は珍しく柔和な笑みを浮かべて
「その言葉そっくり返してやる」と言った。
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