挑発した
※高尾の双子姉

いつの間にか止まってしまったクーラーのせいで、部屋の中は異様に蒸し暑い。ただでさえ暑苦しいのに、互いが互いの体に密着する行為をしているから、余計に暑い。揺さぶられる度にゾクゾクと体中を這う快感に気を遣らないようにしていると、隙を突いたように耳元で名前を囁かれながら舐め上げられた。

「悠、…」

「、…あっ」

後ろからの体勢でいきなり耳を舐められて思わず声が漏れた。真太郎は、私が耳弱いっていうことを知ってるから、油断しているとこうやって思いもよらないタイミングでしてくる。

「声を、抑えるな」

「無理 恥ずかし、 ひっ」

「痕は残ったら、その方が恥ずかしいのだよ」

手にくっきりと着いた歯型を見ながら真太郎は、くつりと笑った。バスケットボールを放るその大きな手で私の手首を一括りにして、さっきより一層動きを激しくして私の首筋に齧り付いた。背後からだから、次に真太郎が何をするかなんて見当も着かない。ただ与えられる愛撫に身を任せるだけだ。唐突な愛撫に背筋がピン、と反り返る。





揃いも揃って汗だくで事に及んでいる。ついさっきまでは大人しく勉強していたというのに、どうしてこういうことになったのか。問うまでもないだろう、と緑間はぼんやりと考える。悠が誘ってきたようなものなのだ。眼鏡を返せと一悶着の末にあちらから…。いやこれ以上は思い出すまい、と思考を放棄した。

「ん、う…」

細くて小さな背中を見下ろしていると、無性に苛めたくなる。必死に声を抑えようと手を噛んでいる悠はこちらの視線には気がつきもしない。自分の与える快感に飲まれまいと必死になっているその様が、どうにもおかしくもあり愛しくもある。こめかみ辺りを汗が流れる。その汗は頤(おとがい)を伝い、雫になって組み敷かれている悠の腰辺りに落ちた。

「真、太郎 首やめて…あんっ」

「素直にやめると思うか?」

「あ、ぃあっ…」

一挙手一投足が目に留まる。抵抗するのも快感に溺れていくその全てが愛しい。とことん苛め抜いてやろうではないか。押さえつけて抵抗出来ないようにして、その上でじっくりと責めてやろうと緑間は悠の上に圧し掛かった。


挑発した
(代償は大きいのだよ、悠)


訂正:20121117
初出:20120731
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