The youth
※高尾の双子の姉で陸上部所属
※高尾双子+緑間は同じクラス


「委員長、専門外です」

「頼む、うちのクラスのタイム順だともう高尾しか居ないんだって」

「いやでも専門外」

「陸上部、頼む!」

「高尾さん、お願い!」

「………」

陸上部をリレーの選手にすりゃ勝てるってもんじゃねえんだぞ!と言いたい気持ちをぐっとこらえて、体育委員の懇願を無碍に出来ず悠は渋々承諾した。



「そもそも私の専門は800メートルなんだよぅ…なのに200メートルリレーとか…」

「文句言うなよ。それは陸上部に入ったら避けて通れない運命なのだよ」

「俺の真似をするな」

「200と800じゃペース配分も違うしそもそも筋肉のつき方が違うんだよ。他のクラスの200やってるやつ見ればわかるよ。腿の太さ違うんだって」

スパイク使って良いかな、スパイク使って良いならどうにか太刀打ち出来そうな気がする。学校指定のシューズって走りにくいんだよね。ダサいし。

「大丈夫だ、悠」

「え、」

真太郎が眼鏡を押し上げながら案がある、と言った。さすが真太郎!体育委員の二人に直談判に行くとか、要は話し合いで解決するんだね、と期待した。が、直後に期待した私が馬鹿だったと思い知ることになる。

「明日から体育祭当日まで、毎日おは朝占いのラッキーアイテムを身につけておけばなんの問題もない。人事を尽くして天命を待つ、なのだよ」

「真太郎、ドヤ顔で言っても無理なもんは無理なの」

球使うからバスケもサッカーも同じようなもんだろってサッカーやらされて結果出せって言われてるのと同じなんだけど、と言い返したが真太郎は和成と話をしている。眼鏡カチ割んぞオイ。

「種目に800メートルあれば喜んで出るのに」

「そりゃ難しいな」

「というかこの後早速リレー選手だけが招集されるはずだが」

「行きたくない。勝手にやってろって感じ」

「ヤバイぞ高尾。陸上に対してこんなに無気力な悠は見たことがない」

「俺も始めて見た」

コンビニで買ったサンドウィッチを袋から取り出して口に含む、でもさっきリレー選手に決まってしまった後味の悪さから味を感じない。というか不味いとさえ感じてしまう。こんなに不味い昼食は始めてだ。もっさもっさと咀嚼する間もぼんやりとどうにか辞退する方法はないかなと考える。

「やれやれ、姉弟揃って手のかかる」

「チャリアカー漕いでる俺にいえる言葉じゃないねそれ。ねえ真ちゃん?」

「悠、お前がいつも練習を欠かさずに行っているのことは知っている。種目の違う競技に出るということは不安が付きまとうだろう」

「真太郎、何言ってんの?」

「陸上競技は個人種目だから、集団競技の話をしてもピンとはこないだろう。しかしな、体育祭というのは勝利を勝ち得るためにクラスで取り組まねばならないのだよ」

おい私の問いはシカトですか!真太郎は私の言葉に耳も傾けずに真面目くさった顔して語りかけてくる。

「例え己の得意とするものの範疇でなくても全力を尽くさねばならない。悠が走ることで人事は尽くされるともいえるのだよ」

「…よくわからないけど、とりあえず私は必要とされてる感じ?」

「お前がいなければうちのクラスの勝利など有り得ない。悠、人事を尽くせ」

「う、うん」

正直言うと真太郎の話しの内容は全然理解出来なかったけど、とりあえず勝つために走ってこい、ということだけは分かった。という訳でリレー選手の招集に叱咤激励された勢いのまま顔を出すことになった。なんか、良いように使われている気がするけどまあ、走っとけばなんとかなるだろ。



バスケ部の相棒が、双子の姉に叱咤激励している様子を見て俺はただぽかんとしているだけだった。真ちゃんがなんか凄い励ましてる。その光景に言葉が出なくて悠が席を外すまで何も言えなかった。

「え、何。真ちゃんっていつもあんなこと考えてんの?」

「勝負だ、どうせなら勝ちたいだろう。発破をかけてみただけなのだよ。体育祭と言えども俺は手を抜かない。悠のことだ、走っとけばどうにかなると捉えるだろう」

「掌の上で転がされてる感が凄いな」

姉は発破をかけられホイホイやる気を出し、俺は使いっぱしりで。高尾ツインズ、緑間真太郎に良いように使われてます。


The youth
(青春真っ只中?のようです)


訂正:20121125
初出:20120813
- ナノ -