理由無き悋気と
※アンケコメ:笠松が嫉妬にかられて同い年の子を狂うまでイカせる
※バド部


男女が一緒に練習する部なら仕方ないのかも知れねえ。でも、何をそんなに気安く。

「で、悠はここで右に動くんだよ」

「あーなるほど」

「なるほどって口だけで言ってんじゃねえぞ」

「分かってるよ」

肩をどついた、かと思えば悠の体に密着させて肘で脇腹を突いて笑う。教室の端の方、相方だろう男子と録画した映像を見ながら何やらフォーメーションがどうとか、動きが遅いだの話し合っている。大会に男女混合ダブルス枠が出来たから先生の気紛れで一回だけ出ることになった、と聞いた時から妙な気持ちにはなっていた。

どっちかと言うと男みたいにさっぱりした性格をしてた悠とは、抵抗なく話すとこが出来たし(他の女子はなんか粘着質で苦手だ)寧ろ積極的に関わろうと思えた。だからお互いに一線越えられたわけで。男所帯の中に数少ない女子がぽつんといたら、そりゃ、気さくな性格だしある程度ボディタッチとかあるんだろうけど。頭では分かってたつもりだったけど、いざ見てしまうと気安く触ってんじゃねえ、と胸糞悪かった。



「か、笠松…痛いんだけど…」

「断れねえの?」

「何、が?」

「今、言ってたやつ」

「ダブルス、のこと?」

部活が終わってたまたま帰りが一緒になった笠松は酷く機嫌が悪そうだった。ひっそりとした下駄箱で二人きり、部活のことを話してた。話が混合ダブルスのことになった途端、突然腕を掴まれて物凄い剣幕で迫られた。断るって、何をそんな。笠松、なんでそんなに怖い顔してるの。言葉の意味も、状況も飲み込めなくて唖然とする。手首をぎゅっと締められて、どうしようと思った。強い力で握られて、動けない。いつも優しい笠松が怖くて声が震える。

「断れねえの?」

「で、出来ないわけじゃないけど、」

「じゃあ断れ」

「な、んで、何でそんなこと笠松が、言うの」

「は?」

「私が好きで、やってることだよ。何でそんなこと言うの」

「、」

何でこんなに笠松が怒ってるのかなんて知らない。好きでやってることに対していきなり高圧的に指図してくるのがなんだか許せなかった。でも、反論したらますます笠松は怖い顔になって、手首を締める力も更に強くなった。痛い、本当に痛い。

「い、痛…」

「あのさ」

「な、何…?」

「体触られて何とも思わねえのか」

「え?」

笠松は相変らず物凄い剣幕だけど、それと同時に凄く悲しそうに私を見てる。とても思いつめたような、悔しそうな表情で。

「か、笠松」

「文句言うつもりはねえよ」

手首はずっと掴まれたままで、掌の感覚がぼんやりとあやふやになってきた。それにあまりに必死に何かを訴えようとしている笠松の様子に圧倒されてしまって体が上手く動かない。硬直したままの私を引き寄せて笠松は消えてしまいそうなほど小さな声で言った。

「でも、何でそんなにヘラヘラしてられんだよ」

どういう意味、と聞いたらもう良いと言って空き教室に連れ込まれて、机に押さえつけられた。抵抗したかったけど、体が言うことを利かない。下っ腹が、じくりと痛んだような気がして振り返ったら、嫌な予感が的中してしまった。見つかったらどうするの、とまるで他人事のようにこの行為を見ている自分自身の冷静さに驚いた。滑りが良くないのに無理矢理動かれてしまって、涙が溢れた。痛い。でも、痛いはずなのに変な気持ちになって、自分の声じゃないみたいな高い声で鳴いてた。

恥ずかしくて必死に口を押さえてたけど、鼻から抜けるような声だけは抑えられなかった。苦しくて痛くて怖くて、泣きながらやめてって言ったけど結局笠松は途中で手を休めてはくれなかった。いつの間にか慣らされてしまったみたいで動くのが滑らかになってた。怖かったはずなのに頭の中は半分くらい蕩けてしまってて笠松が動く度に内股をつい、と水が伝う。感情がない交ぜになって、ぼんやりとしか思考が回らなかったけど、ようやく笠松の言いたかったことを理解した。


理由無き悋気と
(零れ落ちる涙)


訂正:20121126
初出:20120825
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -