真綿の中で
※アンケコメ:黄瀬でエロ
※幼馴染で彼女
頭の先からつま先まですっぽりとシーツに覆われているから、呼吸はしやすいとは言えない。でも多少の息苦しさはあっても、こういう方が好き。シーツから顔を少しだけ出して息継ぎをする。新鮮な空気が肌を撫でるとその冷たさに思わず身が締まった。
「へっぷし!」
「寒いっスか?」
「んーん、平気。ちょっとヒヤッとしただけ」
狭い空間に二人でぎゅうぎゅうになってる訳だから髪の毛は乱れ放題で、前髪が変な方向に向いているなんて当たり前。でもその度に涼太が髪を撫で付けて直してくれるから、私もぐにゃりと曲がった涼太の髪を同じように直してあげるんだ。
「体。冷やしちゃ駄目っス」
「わ」
涼太はそう言うと私を抱き寄せたままシーツをぐるぐると体に巻いていく。暖かい。けど、その所為でちょっとやそっとじゃシーツは解けない。この状態で親に見られたら、だいぶ怒られちゃうんだろうな。ま、今は家に私たち以外いなから問題ないんだけども。窮屈過ぎるくらいにしっかりと体が密着している。どくんどくんと規則正しく伝わってくる鼓動に安心感を覚えながらも、下半身の動きに思わず吹き出しそうになってしまった。
「ちょ、ちょっと涼太。押し付けないで」
「んー、だって悠が可愛いからつい」
「やだぁ」
くすくすと笑い声を上げるのはいつものこと。それにつられて涼太は私の体のあちこちにふざけて噛み付く。甘噛みだから全然痛くない。寧ろくすぐったいくらい。
「少し体重増えたっスか?」
「うん、ようやく一キロ」
「骨と皮だけだった頃に比べるとだいぶ良くなったスけど…」
私は病院通いが長年続いたせいで、一般的な年頃の女の子たちと比べるとだいぶ成長が遅れている。更に食が細いせいもあって全然喉を通らなくて、標準体重までなかなか体重が達しない。ガリガリじゃ健康に良くないし嫌だから、と涼太はいつもこうやって気遣ってくれる。
「頑張ってるんだけどなあ…」
「ちょっとずつでも良いから、ちゃんと食べるんスよ?」
「うん」
「そんでもって悠のおっぱい早く大きくなれー」
「あは、なにそれ」
「せめて谷間が出来れば…」
「変なこと考えてる…」
「そりゃ健全な男子高校生っスから!」
「違うよ、涼太は不健全高校生!」
「その不健全高校生と付き合ってる悠も不健全高校生っス!」
「きゃー!」
ベッドの上でゴロンと一回転して上下逆になる。途端に唇を塞がれた。まるで別人みたいな雰囲気を纏う涼太は目つきまでもが違う。不健全高校生っていうのは合わないかも知れないなあ。
「やっぱ前言撤回!涼太は狼かも」
「いつも犬みたいな扱いだから、なんかランクアップした気がするっス」
「え、犬なの?」
「ワンコとか言われるんスよ…」
「可愛い」
「それは言っちゃ駄目」
「ひっ」
気に障ることを言ってしまったようで、中のそれを唐突に動かされて最中だったことを思い出した。涼太としていると、いつの間にか話しながらになってしまう。裸のままベッドに入り込んで、話に花を咲かせているだけのような感覚。でも思い出したように動き出されてしまうと、後は涼太のペースに持ち込まれてあとはそのまま最後まで突っ走ってしまう。
「次言ったらもっと動くっスよ?」
「ん、ごめんね。…ワンコ」
「こんにゃろー…」
「あ、んっ…」
優しく抱きしめられて愛されて、本当に大事にされてるって実感する。体中にキスされて暖かくなって、世界で一番の幸せ者になった気分。ううん、実際一番幸せなんだと思う。
「りょうた」
「ん?」
「すき」
「おれも、」
真綿の中で
(ふわりとした感覚に身を委ねる)
訂正:20121207
初出:20120928