泣いて鳴いて啼いて
※アンケコメ:木吉に攻められたい
※クラスメイトで彼女


鉄平はたまに物凄く長い時間、私を抱く。いつも以上に記憶は飛び飛びになるし翌日は体中筋肉痛みたいなので軋んでばっかだし。なにより終わった後、あそこが変な感じがする。

「…てっぺ…待っ」

「え?」

「ゆっくり、やって」

既に三回目に突入していたような気がする。鉄平の下で足を開いたまま、されるがままになっていた体を少しだけ起こして鉄平を押しやった。お互いに汗をかいたせいで髪はぐっしょりしてるし、何より私は体力の限界を感じつつあった。それなのに鉄平は疲弊している様子を不思議そうに見てぼそりと呟いた。

「…辛いか?」

こんの天然野郎…!涼しい顔して何をのたまうか!この状況考えてみてよ!辛くなかったら私は鉄人だよ!そう言おうかと思ったけど、申し訳なさそうにこっちを見てくる鉄平を見ていたら“辛いに決まってんでしょうが!”と啖呵を切る気持ちはしぼんでしまった。太い眉毛がしょぼんと垂れている様子はまるで叱られた忠犬だ。その表情を見て、言ってしまいそうになっていた言葉を飲み込んで、代わりの言葉を探していると髪をちょっと乱暴に撫でられながら謝られた。

「ごめんな、悠」

「ん?」

「たまに、我慢出来なくなっちゃうんだ」

気が済むまでこうしていたくなる、と鉄平は打ち明けた。それは性欲が爆発した、という捉え方で良いのだろうか。性欲が爆発するという事実があればの話ではあるが。我慢もなにも、いつも鉄平は私の意識が飛んでしまうまでスるっていうのに、何を言うんだ。普段から我慢なんてしてないじゃない。下半身で、萎えるどころか回数を重ねる毎に大きくなっている気がするそれに妙な違和感を覚えつつ文句を言ってやろうとした。

「我慢って、どう―っ!!」

その矢先、内臓を圧迫されて声が詰まった。あまりに唐突過ぎる。遠慮も気遣いもない一突きだった。快感を得るには優しさの欠片も感じられないから、腹部に大きな衝撃が走っただけになった。それでも次に動き出した時、如何に鉄平が容赦ないかと薄々理解出来る。こちらを見下ろす鉄平の目が据わってて、少し怖い。

「ちょっとで良いから、悠の泣き顔が見たいんだ」

「な、泣き顔って」

「なんていうんだろうな、好きな子ほど苛めたくなるっていう感じ」

「いつも、泣かせるじゃん…っ!」

「んー、それとはまた別かな?」

「ひっ!」

のんびりとした口調とは対照的に激しい律動。がつがつと食いついてくるようないつもの動きと全く違って、今日のそれはとてもねちっこい。出し入れされる度に肌が粟立ってゾクゾクする。いつも小さいとからかって―鉄平本人にはその気は全くない―くる胸の頂きもしっかりと勃ってしまった。

横になってしまえば大した膨らみもなくぺたんこになってしまうのに、それだけが存在を主張する。いやらしいというより恥ずかしい。が、それを考えていられたのはほんのひと時で気がつけばもう鉄平に揺さぶられていた。

「、っ  ひぁ…っ!」

「悠、っ う」

「あっ ぃ っ…ってっぺい…」

口を開けば、普段じゃ出さないような甲高い声で鉄平の名前を呼んでいた。鉄平は、少し苦しそうだけどどこか艶っぽいような表情で私を見下ろす。視線が絡んだのは一瞬だったけど、お互いにやたら興奮してるなっていうのはよくよく分かった。

でもやっぱり自分を御しきれていないのは鉄平の方で、一心不乱に動きまくって私を突き上げている。お腹の奥のわだかまりが大きくなっていく感覚に「あ、そろそろかも」とやけに冷静に考えた。それが弾けそうになって、思わず目を瞑った。音はしなかったけど、例えるならそれはぱちんと割れて水のようなものが怒涛の勢いで溢れ出した。

「や、あ―っ!」

私はイってしまったのに、鉄平は一旦動きを止めようともしないでそのまま腰を打ちつけ続ける。駄目だってば、それ続けられたら私おかしくなっちゃう。鉄平の腕を掴んで揺さぶった。まともに力が入らないせいで気がついて貰うのに少し時間がかかったけど、鉄平はしっかり私を見てどうした、って言った。どうしたもこうしたもないよ。

「はぁっ やだやめてよ、変になっちゃう…」

「はは、悠泣いてる」

「え」

瞬きをすると、頬の上をすいっと柔らかいものが流れていった。顎を伝って、膨らみの乏しい胸元へ滴り落ちる。鉄平は私の頬を両手で包んで涙を拭う。

「うん、可愛い顔してる」

「泣いてるのに?おかしいよそれ」

「でも可愛いんだ」

泣いてる顔が可愛いって、どういうことだ。止まらない涙は、鉄平の手の甲を伝い手首にまで流れた。

「鉄平のツボっていまいちわからない」

「そう?」

「普通は笑った顔が見たいって思うんじゃないのかな…」

「そうかも知れないけど、今日はそういう気分じゃないんだよ」

「ふうん…」

「だからもうちょっと泣いてくれるかな」

いつもは優しい大きな手の感触も、今日だけは私の動きを抑え逃がさないようにするためのものだった。泣いた顔が見たいとか可愛いとか、意味深長な言葉が少し引っかかったけれども。何よりただ果てしなく続きそうなこの行為から逃げられない、という事実をハッキリ突きつけられて絶望しながら抱かれた。


泣いて鳴いて啼いて
(その全てを見せて)


訂正:20121203
初出:20121019
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