分かち合う体温
※腹黒彼女
※激短


冬場になると、指先が酷く荒れる。ささくれも出来るし、かさかさになって血が出たりする時もある。これがえらく沁みるし痛い。だからケアが欠かせない。

「あ」

チューブから出てきたハンドクリームの量は、いつもの倍はあった。俗に適量と言われる量より少し多めに塗っているけれども、これはさすがに一人で使いきれる量じゃない。とりあえず、掌のクリームを手に馴染ませながら手に白く筋をつけるそれの処分に迷っていた。拭き取るなんて無駄なことはしなくない。あ、そうだ。目の前にいるコイツに擦り付ければ良いんじゃないの?

「花宮、手ぇ貸して」

「なんで」

「良いから貸せっての」

「おい」

渋る花宮の手を無理矢理とってあまったクリームを擦り込んでゆく。体温で少し溶けたようで肌の上を滑らかに伸びていく。

「クリーム出しすぎたから手伝って」

「強制的に擦り付けといて何言ってんだ。それを先に言え」

「面倒くさい」

「物臭が」

花宮の指先も案外荒れていた。ケアとか無頓着そうだし、してないんだろうな。バスケは指先大事じゃないのか、と思いつつ、まだまだ余っているクリームを花宮のもう片方の手に擦り込んでいく。指の腹で爪の生え際に擦り込んでいくと、ささくれだっていたところが滑らかになる。十指の次は、掌。私よりも一回りは大きい手。それを両側から包んで擦り合わせる。どこで止めれば良いのか、止め時を見計らっていると花宮がつっけんどんに呟いた。

「悠」

「何」

「お前、握力強ぇな」

「…」

「いてっ」

ちょっとムカついたから、手の甲を思い切り抓ってやった。


20121125
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