寒い冬の日
※出遅れましたが冬至だったので
※みじかい
※同級生で美術部夢主


部屋に入って早々に悠が変なことを言い出した。

「宮地、冬至だね」

「そうだな」

「柚子風呂、入らないとだね」

「そうだな」

「柚子あるし、一緒に入ろう」

「は?」

野球ボールくらいの大きさの柚子を俺の鼻先に突き出しながら悠は胸を張る。両手に一つずつ握られた柚子は傷一つついていない。

「何で柚子なんか持ってきてんだお前は。八百屋の回し者か」

「のんのん!木村くんと結託してなんかないのだよ!」

「緑間の喋り方真似すんな」

悠を部屋に招きいれたのは勉強を教えるためだ。多少の脱線は覚悟していたが早くも多少どころでは済まなくなりそうな悠のテンションにうんざりする。こう、もう少し慎みってものを知るべきだ。テンション高いのは良いけど落ち着いてる時間を作れ。

「そんなに入りたいなら自分の家ですりゃ良いじゃねえか」

「宮地と一緒に入りたいからわざわざ寄り道して買ってきたのに」

「今朝遅刻した理由はそれか」

てへぺろ!と反省する様子が一切窺えない悠を座らせて目の前にテキストを広げてやった。一瞬そっちを見遣ったけど、相変わらず柚子を手にしたまま柚子風呂に入ろうアピールが続いている。ここで話の流れを断ち切らないとズルズルと悠のペースに持っていかれてしまう。断固拒否だ。梃子でも諾とは言わないからな。

「柚子風呂はなしだ」

「やっだぁ宮地ってば…私の体を前にしたら我慢が出来なくなるから止めておこうっていうこと?」

「物理が破滅的にヤバイから助けて下さいって言ってきたのはお前だろ」

「まあまあ息抜きも大事だし…どうすか一発…」

「いい加減にしろっ!」

「あたっ!」

暴走気味の悠を鎮めるべくして振り下ろされたチョップは見事、額にヒットした。


寒い冬の日
(勉強が終わったら入ってやってもいいかな)


20121223
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