まだ、終わらせない
※高尾双子姉夢主
※高尾のあれを咥える


昔はよく一緒に風呂に入っていた。水鉄砲で遊んだり泡風呂に浸かり過ぎてのぼせたり、互いの背中を流し合ったりした。楽しかったけど、別々に入るようになったのは多分小学校に行くようになってからだ。コロコロとした幼い体型が成長するにつれて、俺は肩幅のある逆三角形の男の体になって、悠は丸みを帯びた女の体になった。血の繋がった姉弟で、体の相性もよくて、お互いに何を考えてるか丸分かりで。だから体の変調に気がついたり、その変調の波が同じ周期できたりもするんだろう。



ドアをノックしても反応はない。音楽でも聴いてるんだろうと思って勝手にノブを捻った。

「悠?」

寝れないから話相手にでもなって貰おうかと部屋を覗いてみたら、悠は携帯を手にしたまま熟睡している。友達とメールでもしてたのか。部屋の中は、しんと静まり返ってる。構って欲しくて来たのに、人の気も知らないで寝やがってと理不尽に思ったが(これはただの八つ当たりだよな)、ベッドの中で寝息を立てている悠を見ていると起こす気がなくなってしまった。少し後ろ髪引かれつつもベッドを離れる。このまま部屋に戻るのもなんだから、漫画でも借りていこうかな。しかしよく見れば並ぶのは有名な作家の全集がほとんどだった。おいおい漫画はどこにあるんだよ。小説が多い本棚を眺めていると、声がした。

「かずなり?なにしてんの?」

振り返ると、目を擦りながら寝返りをうっている悠が視界に入った。あれ、さっきまで寝てたはずなのに。寝惚けた目で俺を見遣る悠の声は、ふわふわと柔らかいようで芯が通ったきりっとした感じがした。

「や、何でもねえよ」

「何でもないなら、勝手に入ってこないでよ…」

「悪い悪い」

「もー…」

「起こして悪かったな」

「へいき」

「おやすみ」

「ん…」

ゴトン、と床に携帯が落ちる。その音に反応をしない悠は完全に寝てしまったんだろうか。このままにしてたら朝起きて、いの一番に携帯踏むぞ。

「ったく…」

携帯を拾い上げて枕元に放り投げる。今度こそ、部屋を出て行こう。そのつもりで踵を返した。

「和成」

てっきり寝たもんだと思ってたもんだから、心底ビックリした。悠の手が、俺の手首を掴んでる。行かないで、と言わんばかりに引き寄せられるがまま、俺はベッドに歩み寄る。

「何だよ、急に」

「ふふ」

「携帯。そこ、枕元に置いといたからな」

「あんがと」

「おーい、手ぇ離せよー」

とか言いつつも温かい悠の手が離れて欲しくないと思った。出来ることならこのままベッドに潜り込んで一緒に時間を過ごしたい。けど、親が階下にいる。バレたらやばいどころじゃない。だから、今日はお預けだ。体温を共有したい気持ちを掻き消すように、悠の陽に焼けて毛先が少しだけ茶けてる黒い髪を手で引っ掻き回して乱す。

「ねえ」

そしたら唇が弧を描いてどこか満足げに笑う。

「静かにやるから」

髪の合間から蕩けた瞳を俺に向けて、悠は甘く囁いた。

「していい?」

こういう時、双子って便利なんだか厄介なんだか、少し分からなくなる。



「んん、む…」

戸惑いも躊躇もなく始まった。下着を脱がすなり、それを咥え込んだ悠の口の中でもごもごと熱い粘膜が蠢く。

「っ、う…」

先っちょを舌で舐め回しながら、根元を扱く手付きは慣れたもんだ。悠の指の感触、舌の動き、唇の赤み、その一挙手一投足が俺を責めあげる。弱いところを熟知してる節がある。というか、実際熟知してる。俺も悠のどこがイイ、とか知ってるし。

「んん、ふう…ぁ」

俺のを咥えながら、空いてる方の手で自分のそこをいじってる。いやらしい奴。でもそんな悠を見て興奮してる俺も俺だ。いやらしい想像が先走って、仕方ない。

「いきなり、していいって聞いてくるの…っ…珍しいじゃん…っ」

「は…、そういう気分なの」

それから口を離して返事をしてまた咥える。舌の動きと熱に腰が浮きそうになって、ぐっと腹筋に力を入れて耐える。されるがままになってるのが少し悔しいから、声を出さないようにしてた。感じてるのを気取られないようにしてたのに、ご丁寧に勘付いてこっちを見上げる。

「きもひいい?」

「んー…まあまあ、かな…  っ」

「うほふへ」

嘘つけ。にやっと笑って深く咥え込んだ。ぞわぞわと這い回る快感に、額から汗が噴き出す。悠が更に的確な場所に触れてくる。不意に、初めてシた時のことを思い出した。おっかなびっくり触れてきて、熱くなるそこをまともに見ることが出来なくて。こうやるんだよって握らせて上下に扱かせたら半泣きになって顔を真っ赤にして横目でチラチラ見てばかりいた。それなのに、なんだよ今の悠は。自分から咥えてやがる。エロイ。俺のが大きくなったせいで息がしづらいみたいで、一旦呼吸を整えるために口を離した。

「好きだよね、和成」

「ん?」

「こうされるの」

涎が零れそうなほどに潤んだ口内へ一気に、喉の奥に届くまで飲み込まれて腰が戦慄く。待て、それはヤバイって。じゅるっと涎を吸う音と同時にきゅうと喉を締められると、視界に光がちらついて意識が曖昧になる。うわ。今日の悠は、容赦ねえ。

「悠、悠ってば…おいっ…」

「んん?な、に」

「出ちまう、離せって」

「出ひひゃえあ」

下品に思えるほどに派手な音を出しながらしゃぶる悠はどこか恍惚した表情をしている。窄めた口で刺激されるのをまじまじと見てしまって、膝が跳ねた。うわ、うわ、本当に、嘘偽りなく今日の悠はエロイ。双子の片割れのあまりにもはしたない姿に、下半身の制御が利かなくなった。溶けてしまいそうな熱に思わず悠の頭を押さえ込んで、構うことなく吐き出した。

「―っ!」

「ん、ぐ…っ」

昂ぶっていた体と思考が徐々に落ち着いてきて、悠の口の中に出してしまったことに少しだけ罪悪感を覚える。まあ、仮に口を離させたならどこに出してたんだよっていうツッコミを自分で入れたくなったけど、それとこれとは別ってことで。

「…はぁ…」

ティッシュは何処だ、と枕元に手を遣るけど、ここは悠の部屋だ。俺の部屋と同じようにそれが置いてあるわけじゃない。

「結構出たね」

「っ!」

「何さ。すっ呆けた顔して」

口元を拭いながら悠は、昨日の晩御飯のおかずを思い出すような口調で何気なく言い放った。何でそんな、何もなかったかのように喋ってんの?お前、どうしたんだよ。

「…口の中のもんはどうしたよ」

「飲んじゃった」

そう言って舌なめずりする悠は、まるで別人だった。高校生じゃないみてえな、凄く淫らな匂いが漂ってる。

「和成」

「お、おう?」

「続き、しよ」

私はまだイってない。俺の手を取って、ついさっきまで自分で弄ってたそこに触れさせた。ぐっしょり濡れてる。悠はうっとりと微笑んで俺に圧し掛かってくる。ねえ、入れて。催促する声に反応するよりも早く、悠が動いた。促されるままにちゅぷん、と俺の指が悠の中に沈む。甘ったるい声で、和成、と名前を呼ばれてどうしようもなくなった。


まだ、終わらせない
(そう言ってるみたいだった)


20121231
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