快楽入水
※アンケコメ:今吉に一日中愛される
※クラスメイトで彼女


使い方は間違ってるだろうけど、これは寝正月って言えるんじゃなかろうか。

「あ、…っ」

あれ、これって姫始めとも言うんだっけ?まあなんでも良いかな。麻痺しつつある下半身を叱咤して足を動かすと、ぐちゅっと中からぬめりのある液体が溢れる。家族には、友達の家で新年を迎えるからと言ってある。でも私が今いるここは学校の寮、彼氏の翔一の部屋のベッドの上。

「なあ悠」

「…なあに?」

「眠たそうやな?」

「ん、瞼が重たい」

「さすがにちっと堪えるか」

新年早々に学び舎で淫らな行為に耽っている。いつから始まったんだっけ、これ。かなりの長い時間だとは思うけど、その記憶が曖昧な辺り考えるだけ意味がないようにも感じる。

「寝落ちする前にもういっぺんイっとくか?」

「ひゃ」

体の中心を解すように、私の中の翔一がゆるやかに動き出した。そのせいで睡眠に入ろうとしていた全身の神経が、過敏になって突如として体が熱を持った。お腹から一瞬にして放射状に広がっていく快感に併せて鳥肌も立つ。少し喉が痛いっていうのに、声を上手く抑えられない。押し上げられる度に、吐息と一緒に声が漏れる。

「う、んっ 」

たった一回、動かれただけで体が反応してしまう。さっきまで、ただゆるやかなぬるま湯に浸ってるみたいに心地良かったのに。痺れを切らした足にようやく感覚が戻ってきたような、むず痒い安心感。その妙な現象と、翔一の熱が一緒に溶けてゆく。朦朧としてきた思考は、体内で動き回る翔一でいっぱいになってしまった。そこはだめ、そこをされたら、おかしくなっちゃう。

「何でそんな顔しとん」

浮かれる私とは正反対に冷静な翔一の声に、ふと現実に引き戻される。そんな顔って、何?

「あ、変な、顔してる…?」

「ていうか、泣くなや」

「へ」

泣いている。誰が。私が。ネジの外れかかった思考で、そこまで考えて目元に指を這わせた。あれ、おかしいな。拭っても拭っても指先を濡らす涙を見て、ようやく理解する。本当だ、私、泣いてた。

「ゴミでも入ったか?」

「え、いや…何も…」

無意識に溢れてくるそれを翔一も拭ってくれた。

「じゃあ、痛かったか?」

「ううん平気。なんか、頭ふわふわしてきちゃって」

「…へえ」

さっきのむず痒い安心感を思い出す。ふわふわ、じわじわ、なんて言えば良いのか分からない。ちくちくした痛みを通り越して、ようやく足が落ち着いたあの感じ。翔一は、ぼんやりしてる私に向かって、言った。

「そんなに良かったん?」

「なのかなあ…」

後先考えずにぽろりと口から出てしまった言葉の重大さを理解したのは、中に入ってることをすっかり―泣いたことを指摘されて―忘れていた翔一のそれに思い切り突き上げられてからだった。冗談で言ったんだ。翔一は私をからかおうと、冗談を言ったんだ。馬鹿正直に答えてしまった数秒前の私は、どんだけ腑抜けていたんだろう。違う、ともそんな恥ずかしいこと言わないでよ、とも言えば良かったんだ。そうすれば、今、こんなに脳髄を揺さぶられて下半身を収縮させることも、恥ずかしい声を出すことも、なかった、のに。

「しょ、いち…っ!」

「あまりに無防備で思わず、な」

「ひ、あん、っ」

返す言葉が?格好が?何が、無防備?

「そら犯したくもなるわな?」

「ふ あっあ、 や、 ん」

また中の方からぬめる液体が出てきた。もうどっちものかなんて分別がつかない。ねえ、いつまで続くの。生々しい空気が時間の経過を忘れさせる。徐々に息の根を止められていくような気がしてならない。息が出来ない、呼吸が止まってしまう、なんてことを言ったらきっと翔一は笑って「気のせいやろ」って言うんだろう。

「翔一、待って」

「出来ん相談や」

待たない。そう宣告されて私は溺れる覚悟をした。


快楽入水
(どん底に落ちるまで終わらない)


20130203
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