平行線を辿って永遠に重なることはない
※アンケコメ:花宮と正反対な性格で気に食わないから犯ry
※マネージャー(二年)夢主
目の前で仁王立ちするマネージャーは、正義感溢れる言葉を発する。
「わざと人に怪我させるようなことばっかして、恥ずかしくないの」
正々堂々と、卑怯な手を使わずに試合しなさい。間違ったことは許さない。曲がったことが大嫌い。道理や倫理に反することへの徹底的な否定。こういう奴を見ていると、虫唾が走る。眉を吊り上げて俺を見下ろしている。
「何でお前が指図すんだよ」
「ちゃんとプレイしようって気はないの?」
「してんだろ」
「あれでバスケットボールをやってるって胸を張って言えるわけがないわ」
「お前さ、戦略って言葉くらいは知ってるよな」
別にわざわざ怪我させようって訳じゃねえよ、あれで頭に血が上ればこっちのもんじゃねえか。言わせるんじゃねえよお前は馬鹿か。顔を見るのも嫌だからとそっぽを向いていれば、こっちを見て話なさいよ!と喚く。本当にうるせえ女だな。
「実際に怪我人が出てるの。戦略云々で言い逃れ出来るもんじゃないわ」
「接触することぐれえあるだろ」
「毎試合のことよ。故意にでもしない限りあんなこと起こるはずない」
「バスケは当たりが激しくてナンボだろうが」
「百歩譲って貴方が言ってることが正しいとしても、それでも私は許せないの。あんなことして勝てて、何が嬉しいっていうの」
「しつけえな」
てめえの考えを押し付けるんじゃねえ。椅子から立ち上がれば立場は逆転する。見下ろされていた俺がこいつを見下ろして、見下ろしていたこいつが俺を見上げる。攻守が入れ替わった途端、手が出た。
「きゃ…!」
一回痛い目をみれば、すぐ大人しくなる。女ってそんなもんだ。手を出されないからとのさばってる、キンキン喚いてうるさいだけの存在。思慮は足りねえ、人の話に耳は傾けねえ、百害あって一理なし。女ってそんな存在だ。
「さっきまでの威勢は何処行ったんだよ」
お得意の“正しいことをやれ”だとかいう講釈を垂れてみろよ。そう言いながら床に座り込んでいる悠の胸倉を掴んで突き飛ばす。ああ、胸糞悪い。
*
痛い、痛い、熱いのに冷たい。上着は全く乱れてないのに、お腹がひんやりする。早く終わればいいのに、こんなこと。
「、っあ」
この卑怯者、女に手を上げるなんて、最低、最低なやつ。
「い… い、痛い…!」
その上、人の体を好き勝手に蹂躙して、なんて極悪非道。貴方の血は何色なのよ。悔しい。こんな卑怯な手に屈してたまるものですか。
「こんな、ことされたって…」
「はあ?」
「絶対、止めさせてやる…」
どんなことされたって、全うなプレーをさせてやる。事故を装って人に危害を加える間違ったやり方を改めさせてやる。必死にそう考えることで、下半身で蠢く気持ち悪い熱量の感触を忘れようとした。
「偏向的な考えしか出来ねえ奴と話すと本当疲れるぜ」
「ひ!」
偏向的ですって?私の考えが、偏ってる?正々堂々と戦うというこの考えがそうだっていうの?偏ってるのは貴方の方でしょ。真っ直ぐじゃない、曲がった考え方。勝てばそれでいいなんて、そんなのが罷り通るわけがないじゃない。
「言って理解しようともしねえなら、手段は一つしかねえだろ」
学習する気になったか?と彼は言う。学習する気がないのは、私じゃない。貴方。何度言っても私の言葉に耳も傾けなければ、理解しようともしない。そっくりそのまま、さっきの言葉をお返しするわ。そう反論した。
「女の頭には蛆虫でも沸いてるのか」
酷い蔑みの言葉を浴びながら内臓を突かれて、自分の声が勝手に腹の底から沸き上がってくる。
「…ぅ、 っ」
好きなバスケを汚されたくないだけなのに。悔しくて涙が零れた。
平行線を辿って永遠に重なることはない
(相容れない)
20130426