星をつける日
※美術部彼女夢主

「ごめん悠、アレ、一枚持ってたりする?」

「アレ?」

体育の授業が終わったあと、いつもお昼ご飯を一緒に食べている友達から声をかけられた。アレってなんだ。

「えっと、ちょっと早くなっちゃってさ…」

「あー、そういうこと」

任せておけ、私はいつも袋丸々一個装備している女だ。安心して、もしものために夜用もあるからと言うと笑われた。ブツを渡した後に、はたと気が付く。最近、来たっけ?とちょっと不安になって、手帳を取り出してみた。日付の隣、小さく星マークがつけてあるのは先月半ばが最後でそれ以降はどこにもついてない。まだ来てない。というか。

「…二週間遅れてるじゃん…」

お腹痛くないし、なる気配もないし。そもそも来る気配ないし。これはもしかして物凄く憂慮すべき事態なのでは。



「生理が来ないです宮地先輩…」

「………」

「私、初めてだったのに、怖いって言ったのに無理やりするから…」

「突っ込み待ちなんだろうけど何も言わねえぞ」

「いやいやいや、もしかしたらガチかも知れなくて」

「は?」

「ガチで二週間遅れてるんだよ」

「え?」

珍しく真面目な面持ちの私を見た宮地の顔色が若干青ざめる。おお、青ざめた宮地の顔ってレアだなあ。写メ取りたいところだけど怒られるからやめておこ。

「高校生で妊娠なんてドラマみたいな展開だよね…」

「………」

「宮地は高卒で鳶職に就いて育児に追われる私い魅力感じなくなって他の女と寝ちゃったりするんでしょ、知ってる…」

「その手の話でよくあるテンプレ的な展開だなオイ」

どうなるんだろう、このまま来なかったら。数か月後、私のお腹は徐々に膨らんで大きくなって隠しきれなくなって、ご近所さんに後ろ指刺されるんだろうか…。「高校生で妊娠ですよってよ…」「あらやだ、父親も高校生なのね」みたいな陰口叩かれたりするんだろうなあ…。出産ってお金もかかるし痛いんだろうなあ…私死なないで産めるのかなあ…。

「…妊娠検査薬でも買って来よう…はあ…」

「待て」

「へっ」

そもそも最後に致したのはいつであったか。二人して曖昧な記憶を辿っていく。お互いに部活で忙しくて学校で話すことはあっても、恋人としての営みとかそういう行為は全くのご無沙汰であったのだ。二か月くらいは確実にない。シたあとに一回来てるから、つまりそういうことの可能性が出て来た。

「…まさか…想像妊娠…?」

「つーか、お前、痩せたな」

「えー、そんなことないよ」

「やつれてるだろこれは…血色悪…飯食ってるのか」

「ううん、ここ最近ようやく水生活に慣れてきたところ」

「は、水?」

「うん、ご飯食べないで水だけで生活すんの」

「………」

「………」

「不摂生にもほどがあるだろ!悠お前は馬鹿か!」

「ごめんなさい!すみません!!」

「というかそれが原因じゃねえのか!」

「わかりません!」

ネットで調べてみたら、極端にご飯の量を減らしたりするとホルモンバランスが崩れて生理が遅れることもあるようで。やってないことは確かだからその可能性も皆無だとの結論に達したのでとりあえず事なきを得た感じだ。一緒になって調べてくれる宮地に「宮地って良い奴だね〜」って言ったら「お前がだらしなさすぎるんだよ」って頭小突かれた。

「なんで絶食なんて真似し始めた」

「んー最近ちょっと行き詰ってて、いい刺激になるんじゃないかと友達から借りたCDに入ってた曲の歌詞に感化されちゃって…」

「根っからの大馬鹿だなお前は」

てへぺろ、と誤魔化そうとしたけど宮地の剣幕が凄いことになってたので素直に謝っておいた。その日のうちからしっかりご飯を食べるようにしたら、一週間もしないで月のものが来た。これってただの栄養失調みたいなもんだったんだろうか。


「空腹に負けるくらいの才能で何を生み出した」って歌詞検索すると感化された曲名とかがわかります。(要らない情報)
20141027
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