堕ちろ
*腹黒彼女
*原と付き合ってる感じ

頭の芯だけ残して他の部分が麻痺している。自分が誰と何をしているか、という認識は出来ている。どんな格好をして、なんという声を出して、睦言を交わしつつ行為に耽っているのはわかっている。肌に触れる指先が冷たいのか、肌が熱くてそう感じるのか。いつまで続くのか、緩急のある動きの不規則性に戸惑うのが辛くて、いっそ発散させてくれと懇願しそうになる。

「あ〜あ、眉間に皺寄ってる」

「……っ、」

何の前触れもなく、額に指先が触れる。力んでいた目元がゆるんで、視界が色づく。眩しくて原の表情は霞んでいるはずなのに、にやりと意地の悪い笑みを浮かべているのは声色と雰囲気からして分かった。頬を伝う汗を手の甲で拭う。そのまま下ろして指先で肋骨をなぞりつつ、上へ上へと肌を蹂躙する。その先が想像にたやすくて、反射的に目を閉じた。

「う、っ」

「掛川ちゃん、これ好きなの?」

鳥肌立ってるね、と逐一状況を伝えられるまでもなくそんなこと自分で分かっているし、全然好きじゃない、と答えようにも口を開けば恥ずかしい声しか出ない。こねくり回す手を制して必死に首を横に振って否、と示す以外に方法がない。

「こっちの方が好き?」

「ひ  ――っ!」

振り払った手で私の腰をがっちり掴んで、ずっと主張しているそれで突き上げた。気遣いとかそういう類のものは感じられなくて、ただ乱暴に食い貪る。内臓が押し上げられるような感覚から逃げたくて、足を畳んで原の体を押し返す。ぬるりと、少しばかり出ていった気配に力が抜けた。

「それとも煽るのが好きなわけ?」

邪魔しないで足を開いてろと言いたげに、膝を割って一層深く穿つ。逃げ場のない行為にやり場のない感覚の蓄積。抵抗すればするほど、それが罰だと言わんばかりの動きをして、引っかき回されて、上り詰める手前になるとこそばゆいばかりの愛撫をする。

「きついのが好き?」

「ちがう、」

「もっといやらしいことの方が好き?」

「………」

―好き嫌いはどうでもいい。だから早く終わらせて。

終わらせる過程に考えを回すほどの余裕なんてない。終わらせるというよりこの状況から解放されたい一心だった。

「俺は好きだけどね」

深く密着しているこの状態をまた放置して、下腹部を手のひらで撫で回す。真綿のような曖昧な距離感のそれに、我慢出来ずに声がもれる。口を押さえる手のひらに熱い吐息がかかって、それで余計に息が詰まっていく。

「いやらしい格好だね、悠」

繋がっている部分を直に広げて、ねっとりという擬音がふさわしい視線が注がれている。とんでもない恥辱のはずなのに、そういった感情は不可解なことに湧いて来なかった。されるがまま与えられるままに体がうち震えて、涙がこぼれて指先を伝った。

「すげえそそる、それ」

嗜虐的な笑みを浮かべる原の体温が鼻の先ほどに感じたのと、腹部にがつんと衝撃が走ったのは恐らく同時だった。


20150405
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