フォトグラフ
※高尾双子姉

「アルバムなんか広げてどうしたの」

部活で疲れた体を引きずりながら帰宅すると、母さんと和成が昔のアルバムを押入から引っ張りだして眺めていた。

「悠も見てみろよ」

「大掃除の時にとりあえず放り込んでたのすっかり忘れてて、見始めたら懐かしくて」

「しっかし昔の写真がこんなにたくさん残ってるってすげーな」

手付かずになっているだけで、じいちゃんばあちゃんのアルバムもあるみたい。ということは子供の頃の父さんの写真もあるんだろうなあ。

「これ父さんと母さんが結婚する前の写真だわ」

そう指さす写真は少し色あせて今ほど絵も鮮明ではない。時代を感じるとはまさにこういうこと。服装も髪型も少しばかり古くさい。二人とも今とあまり変わりはないものの、見比べるとやっぱり幾分か顔に深みが出ているようで月日の経過を感じる。

「懐かしいわねえ」

ページをめくると、赤ん坊の写真がところせましと並べられていて、これが自分たちであることは一目瞭然だった。顔つきは成長で大人びているからパッと見ただけじゃすぐにはどっちがどっちと見分けはつかない。じっくり見ると、目元僅かに違い左側に写っているのが私、右側が和成と判別出来たけどなんだか、違和感があった。

「なんで私たち同じ色の服着てるの?」

「あんたが和成と一緒の色じゃないとびーびー大泣きしたのよ」

「えっ」

この辺りじゃないかしら、と次のページには顔を真っ赤にしている赤ん坊二人。泣いているのが私で、今にも泣き出しそうに顔をしわくちゃにしてるのが和成。

「そしたら和成も悠につられて一緒に大泣きしててんやわんやだし。お揃いの色着せたら父さんは二人を見分けられなくて困ってたし面白かったわ」

「写真を撮る余裕はあったんだな」

「慣れた頃に撮ったの。記念にと思ってね」

こうやって話すきっかけにもなったしね、と母さんは楽しそうに笑う。次の写真は恐らく二人ともに幼稚園くらいの頃のもの。これもまた二人してお揃いの、オレンジ色のシャツとデニムのサロペットを着ている。

「これも俺とお揃いの服じゃん」

「これ買うときも『和成とお揃いじゃなきゃいやーっ』、またそこでも大泣き」

「うっは、まじかよ悠」

俺のこと大好きか!とちゃかしつつ大笑いする和成の肩をどつく。

「覚えてないし知らないし」

「照れんなよ、写真には残ってるんだし」

「うっさいなー覚えてないって言ってんでしょーが」

「そういえば和成は『悠が先に寝ちゃってさみしい』って泣きついてくることもあったわね」

あとは幼稚園の運動会で悠が他の男の子と一緒にお遊戯やるのが悔しかったのか母さんに泣きつきながら怒ったこともあったわね、とアルバムを眺めて言う母の表情は完全にからかいのそれだった。

「私のこと大好きか」

「覚えてねえ知らねえ」

「一緒に寝る?って聞くと『ううん』、って寝てる悠の背中にくっついてぐずりながら寝てたわねえ」

母さんそれ以上言うのやめて、と耳まで真っ赤にして顔を覆う和成。全部覚えてるってのも一概にいいこととは言えないね、と笑ってやった。


20150425
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