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「ええっ!?剣城くん!?」




  ちょっと遠出をしようと駅へ向かえば、そこには私と同じく電車を待っているのであろう剣城くんがいた。けっこう大きい声で名前を呼んだので、剣城くんは肩を一回震わせた。ゆっくりと私の方を向いたあと、挨拶がわりに頷いてくれた。「剣城くんもどこか行くの?」「電車待ってるんだから、当たり前だろ。」あ、そりゃそうか。バカ丸出しのことを聞いてしまったと、恥ずかしい気持ちがだんだん込み上げてくる。話しかけたうえに、さらに隣で一緒に待つなんて馴れ馴れしかったかなぁ。心配になってチラッと剣城くんを気付かれないように見たら、初めて目にする私服姿。制服しか見たことなかったから、何か新鮮。今度は自分の格好が変じゃないか心配になった。…って、別に一緒に行動するわけでもないのに私は何考えてるの。




「……苗字、」
「え、あ、は、はい!」
「…電車来てるぞ。」




  いつの間にか電車は到着していて、先に剣城くんが乗っていく。私も慌てて乗ろうと足を進めたとき、ハッとする。確かに剣城くんは私の名前を呼んだ。覚えててくれていたことが嬉しくて、頬が緩んだ。のもつかの間、後ろに並んでた人達が一気に押し寄せてきた。支えきれず体制が崩れ、そのまま前に転びそうになる。やばいと思った瞬間、私は剣城くんにぶつかった。ぶつかるというより、タックルのほうが正しいかもしれない。




「ご、ごめんなさい剣城くん…」
「……」




  ああまたやらかしてしまったと、申し訳なくなってすぐに剣城くんから離れようとしたら髪の毛が引っ張られる。「い!?」痛くて思わず可愛げの欠片もない声を上げる。髪の毛を見ると、それは剣城くんの服のボタンと絡まっていた。




「嘘…、ごめん剣城くん!」
「おい、動くな」




  剣城くんも私も頑張ってほどこうとするが、一向にほどける気配がない。どうしようと頭を悩ませると、鞄の中に裁縫セットが入っていたことに気付く。そこにはハサミが入ってる。これだ!と思い鞄の裁縫セットからハサミを取り出した。




「剣城くん、これで髪の毛切ってくれない?」
「……は?」




  私の方からはよく見えなかったので、剣城くんにお願いしたら困った顔をされる。「…お前バカだろ」え。とうとうバカと言われて私は硬直した。でも切る以外にどうしたら…。そう思ったら剣城くんが手を動かして、剣城くんの服のボタンを切った。てっきり髪を切るもんだと思ってたもんだから、私はびっくりした。




「つ、つつつつ剣城くん!?」
「これでいいだろ」




  無事に離れることは出来たけれど、一個なくなったボタンに罪悪感がたまる。謝ると、別にと返ってくる。
  丁度目的の場所へ到着したのか、剣城くんはじゃあなと言っておりていった。「ばい、ばい…」呆然と剣城くんの後姿を見送った。剣城くんがいなくなった車両の中、私の胸はドキドキとなり続けた。









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