twinkle | ナノ




  耳に響くのは先生が黒板に書くチョークの音。頬杖をついて見るのは空っぽのあの席。今日もいないなぁと不思議に思っているのは私だけではないはず。視界に入っている松風くんは、まったく気にしてないかのように夢の世界へ行っちゃってるけど。何だ剣城はまたいないのか。そんなセリフもずいぶん聞き慣れた。授業に出なくて勉強分かるのかなと、剣城くんの心配をするよりまず自分の心配をしなくちゃいけない。入学してまだそんなに日が立ってないけど、私の頭の良さは小学生のときからちっとも変わってないみたいだ。
  キーンコーン。授業の終わりを告げる音が鳴る。ふぅ、やっと終わった。一つため息をつき、使った教科書を鞄の中にしまった。あとは終礼をして帰るだけだ。部活に所属していない怠け者の私はそう考える。さっきまで夢の世界へ旅立っていた松風くんはもう起き上がって部活だ!とはりきっていた。




「じゃあね、名前」
「ばいばーい、部活頑張ってね」




  葵ちゃんと別れの挨拶を交わしたあと教室を出ようとした。しかしパッと目についた残された鞄に私は考える。そして、よしと心に決めた私が向かう先は学生がサボる定番の場所だ。




  ガチャっと古びたドアをおそるおそる開ければ柔らかい風が吹き抜ける。気持ちいい風を感じつつ周りを見渡す。誰もいないや。やっぱり屋上にいるなんて簡単な考えだったか。諦めて帰ろうと最後に死角になっているところを除けば、私が探していた人、剣城くんがいた。




「わっ、寝てる…」




  まさか寝てるなんて思わなくて少しびっくりした。でもあったかいし風は気持ちいいし、そりゃあ寝ちゃうか。勝手に納得した時に気付く。そういや剣城くんサッカー部だよね?部活行かなくちゃダメなんじゃ…。




「もしもし、剣城くん?」
「……」




  ダメだ、返事がない。遅刻したら新入生なのに大変だよね…。そう思って戸惑いながら肩を揺すると、目が合った。……え。寝ている人は目を開けない。つまり剣城くんは




「起き、た……?」
「…何してる」
「うわぁ喋った!」




  無意識に近づけていた体をおもいっきり遠ざけた。その行動と大声に驚いたのか、今度は自分で剣城くんは肩を揺らした。でも喋ったって何。喋ったって。ていうか、この状況はけっこうまずいよ!剣城くんから見たら私かなり怪しい人。自分が眠りから覚めたら別に仲良くもない人がいるんだもん。




「あの、ごめんなさい…。」
「……」
「剣城くん、いつも授業出ないから気になって…」
「……」
「だから屋上にいるかなって思って…」
「……俺のことはほっといてくれ」




  立ち上がり、屋上から去ろうとする剣城くんに冷や汗をかいた。そうだよね、おせっかいだよねこんなの…。剣城くんの後ろ姿にごめんなさいと言う。そうすれば剣城くんがちらっと私を見た。




「…おい」
「はっ、はい!」
「屋上にいたこと、誰にも言うんじゃねぇぞ」
「え、えぇ?」
「分かったか?」
「う、うん…。誰にも、言いません…」




  先生にばれたら怒られるからかな?剣城くんでも怖いものとかあるんだぁ。私以外誰もいなくなった屋上で意外とつぶやいた。









20120318



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