HEAVEN | ナノ



「ねぇ恋季、天国って信じる?」




  何の前触れもなく、太陽はそう聞いてきた。天国は死んだあとに行く世界のことって、私はそう聞いたよ?信じてるっちゃあ信じてるけど、分からないよ。生きてるんだから、私も太陽も。




「どうしたの?急に、」
「なんとなくだよ」
「…天国、かぁ」
「どう?」
「…まぁ信じてるかな?」




  わかんないけど。そう付け足しすと、太陽は何だか納得のいかない顔をする。私にどんな答えを求めたんだろうか。そりゃあ地獄よりかは全然いいし、天国てきっと幸せなところなんだろうなぁ、とは思う。それでももし太陽が天国に連れて行かれてしまうのなら、私は天国を好きにはなれない。こんなこと、太陽には口が裂けても言えないけど。




「太陽は?」
「僕?」
「天国ってあると思う?」




  うーん、と太陽は考えるそぶりを見せる。なんだ、てっきり私に聞いてきたから自分は答えを出してるのかと思ったのに。




「天国って、死んだあとに行く世界じゃないのかも」
「…どういうこと?」
「僕にも分からないけどね、」
「……」
「見つけたいなぁ、天国」




  太陽は何処か遠い目をした。今日の太陽はなんか変だ。声をかけることが出来なかった私は、ただただ太陽を見つめた。夕日で少し眩しかった。なんだか変な雰囲気になってどうしようかと迷っていたら、そういえばと声をいつもより少しあげて太陽が言う。




「恋季が願ってくれたから、叶ったよ」
 「ん?何が?」
「ホーリーロード。雷門中との試合に出れることに戦えることになったんだ」
「ええ!本当に!?」
「うん!」
「よかったね、本当によかったね!太陽!」
「喜んでくれてありがとう。でも、そろそろ帰らないとダメな時間だよ?」
「あっ!もうこんな時間だ!」




  それじゃあね、バイバイ。とこみ上げてくる喜びを抑えながら言ったあと、絶対応援に行くから!と、そう言えば太陽は微笑んだ。雷門中かぁ、お兄ちゃんが通ってたこともある中学だ。名門ってきくくらいだし、すっごい強いんだろうなぁ。でもきっと、太陽なら勝つよね。なんたって十年に一人のストライカーだなんて、すごいこと言われてるんだから!




「あら、恋季ちゃん。」
「あっ、冬花さん!」
「何だか嬉しそうね」
「はい、太陽が試合出れるからすっごい嬉しいです!」




  私がそう言うと、冬花さんは少し沈んだ顔をした。あれ、どうしてそんな顔するんだろう。試合に出れるってことは、太陽の体も良好ってことだろうし、冬花さんにとっても嬉しいことなのに。




「冬花さん?」
「…本当はね、ダメなの」
「…え?」
「試合、出ちゃいけないって言われたんだけど、太陽くんがどうしてもって、」
「……」
「試合のときには医療チームおいてくれるらしいから大丈夫だと思うけど、あの体じゃ…」
「……」
「恋季ちゃん?」
「…失礼します。」




  これ以上聞きたくなくて、迷惑だなんてことも考えずに私は廊下を走り出した。ねぇ太陽、どういうことなの?私運動神経だけじゃなくて、頭もそんなによくないから分からないよ。冬花さんが言ったこと。そんな危険をおかしてまで、太陽はサッカーがしたいの?分からないよ。頬に温かいものを感じた。あぁ、私泣いてるんだ。




「こんなことを望んだんじゃないのに…っ」




  試合に出て太陽。試合に出ないで太陽。なんて矛盾した想いなんだろうか。私はほんと、どうしようもない人間だ。







20120207

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